【ISO全般】利益を生み出すマネジメントシステム

LRQA ジャパン 特別技術顧問 星野 矩之


LRQA ジャパン
特別技術顧問
星野 矩之

国内では、40000件近い企業がISO 9001の認証を取得しているといわれていますが、マネジメントシステムが経営に寄与していない企業は約半数という調査も出てきています。しかし、その一方でマネジメントシステムを積極的に経営システムに取り入れ、利益体質を強化している企業も数多くあります。同じ認証取得企業で、なぜ、こうした違いが生まれているのでしょうか。マネジメントシステムの意義、そして、有効な活用法について考えます。

約半数の企業がマネジメントシステムを活用していないという現実。

品質、環境、情報セキュリティなど、さまざまなマネジメントシステムの導入が進み、現在、ISO 9001は40000件近い企業が認証を取得しているといわれています。しかし、ある調査によると、認証取得企業のうち約半数が、“マネジメントシステムが経営に寄与していない”と答えており、その効果に疑問をもつ企業も多くなっているようです。なぜ、こうした状況になっているのでしょうか。

そもそも、マネジメントシステムを持っていなくても素晴らしい企業はたくさんあります。こうした企業では、経営者が透明性、説明責任を持ち、何か問題が起こったら、それをオープンにして、手順書を作り解決していくという、健全な経営システムを持っていることでしょう。これはまさに、マネジメントシステムで求められる継続的改善が図れる経営システムといえます。

一方で、マネジメントシステムの認証を取得したのに、品質不良や不祥事を起こしたり、経営状態が改善できないという企業もあります。こうした企業では、従来の経営システムで運営されており、マネジメントシステムは審査員が来たときだけ、品質部長や環境部長があわてて手順書を用意しているような状況なのではないでしょうか。

本来、マネジメントシステムは、経営システムを規格の要求事項と照らし合わせ、その完成度を判断するものです。マネジメントシステムは経営システムという幹の添え木でなければいけないのです。ですから、経営システムとマネジメントシステムが切り離されてしまっては、マネジメントシステムが経営に寄与せず、どこか経営システムに誤りがあっても、それを救うことはできません。

本来、マネジメントシステムは儲けを生み出すことが目的。

こうした状況を脱していくためには、何よりも経営者自身が強い意志を持ち、マネジメントシステムを活用しながら、経営システムを改善しようという気概を見せることが必要です。しかし、これまではどうしてもマネジメントシステムを、品質部長や環境部長に任せきりにさせてしまう企業も多かったようです。

こうした中で、最近、マネジメントシステムの費用対効果が問われ、経営者がマネジメントシステムの意義について真剣に考え、その重要性に気づき始めています。では、このマネジメントシステムの本当の意義とは何でしょうか。

品質、環境、情報セキュリティを問わず、どんなマネジメントシステムも、「経営に資する」ものであると書いてあります。つまり、本当の意義とは“儲けを生む”ことなのです。経営者の中には、“環境マネジメントシステムは、地球環境を守っていこうという崇高なものではないか”という方もいらっしゃいますが、キレイ事ではマネジメントシステムを有効に活用できず、厳しい状況の中で企業が勝ち残っていくこともできないでしょう。もっと、マネジメントシステムの本質を捉えることが必要です。

例えば、環境マネジメントシステムでは“品質不良の削減”を目標として掲げることもできます。それは、不良品を減らすことが廃棄物の削減につながり、資源の枯渇を防ぐことにもなるからです。そもそも、組織のマネジメントはひとつのため、品質、環境と切り分けることはおかしいのです。

経営システムの棚卸しが貴社の弱点を強化。

では、マネジメントシステムをどう活用すれば、“儲け”につなげることができるのでしょうか。

まずは、“経営システムの棚卸し”をしてみることをおすすめします。元々ISOを取得するような企業では、いい商品、いいサービスを生み出していますので、その経営システムは宝物であるといえます。経営者を中心に各担当者が集まり、経営システムと規格の要求事項をひとつひとつ照らし合わせてみてください。そこで、要求事項に満足しているものはそれを維持して、逆に要求事項を満たしていないものがあれば、キチンと担当者を決めて、その部分を強化しなければなりません。今ある経営システムを、マネジメントシステムを活用しながら、その強み、弱みをしっかりと認識して、経営システム自体を改善していけばよいのです。

マネジメントシステム活用のカギとなるのは内部監査員。

マネジメントシステムを活用していく上で、特に大切なのは内部監査です。内部監査員は経営者になり代わって、別の視点から経営システムの弱点を明確にしていくため、言わば経営者の分身ともいえます。もし、内部監査員が経営者の方針を理解しないで監査をすれば、経営に対する有効性はほとんどないといえるでしょう。そのため、内部監査員に有能な社員を登用することが、経営システムの弱点を把握して、経営改善に結びつける近道ともいえます。

例えば、係長候補、課長候補、部長候補に内部監査をさせてみて、それぞれの視点で経営の強み、弱みをあげさせ、さらに、解決策=ソリューションまでを提案させてみる、それを評価して昇格ポイントに結びつける、といった試みを行ってみてはいかがでしょう。社員の内部監査に対するモチベーションも高まり、大きな成果が生まれることでしょう。

こうした取り組みを行うことで、経営者が透明性、説明責任を持ち、何か問題が起こったら、キチンとオープンにして、手順書を作りみんなで解決していく、という健全な経営システムとなるでしょう。そして、不良品の発生や、不祥事の発生、2007年問題といった経営課題を解決でき、企業の利益体質が強化され、儲かる仕組みができ上がっていくのです。

マネジメントシステムは経営ツール/トップダウンのプロセス

経営改善のきっかけを与えるのが、審査登録機関が果たす役割。

マネジメントシステムで経営改善を行っていくには、審査登録機関選びも大切なポイントとなります。ただ単に規格の要求事項をチェックリストにして審査を行っていくような審査登録機関では、経営改善に役立つとは言い難いでしょう。LRQAの審査では、まずはトップインタビューを行い、その理念、方針、経営システムを理解することから始まります。その上で、経営方針、経営システムに沿ったカタチで、決められた担当者が、プログラム通りに業務を行っているかを突っ込んでチェックします。企業の弱点を指摘することで、企業の経営改善のきっかけを与えています。そのため、LRQAは、審査を通して経営改善に寄与するビジネスパートナーといえるのです。

確かにこうした審査を行っていくには、審査員の高いスキルが求められます。そのために、LRQAでは、審査員評価登録機関以上の時間と内容をかけて厳しい審査員教育を行っています。

マネジメントシステムの意義が問われている今だからこそ、改めてその本質“儲けを生みだすツール”を理解しながら、経営システムの改善にマネジメントシステムを積極的に活用していただきたい、LRQAはそう考えています。

マネジメントシステムの基本

社会から信頼される第三者審査登録制度を目指して

昨今、第三者審査登録制度の意義が問われ、審査登録機関が不祥事を起こすなど、その制度に危機感がつのっています。こうした中、審査登録機関は厳正なる第三者機関であるべきだと考えています。資本、資金面で、政府、業界からのサポートがあったり、審査員が出向者であってはいけないのです。LRQAでは、専属の正社員、委託社員のみを審査員としており、また、ロイド船級協会のもつ250年培ってきた風土・文化“嘘をつかない、説明できる、曖昧なことを言わない”を審査員に求めています。さらに、お客様と対等の立場に立ち、第三者機関としての気概をもちながら、審査を通じて企業に対して正当な評価を行い、もし弱いところがあれば、改善するためのきっかけを与えています。そして、社会に対して、企業の適合性を明確に説明・証明しています。

また、万が一顧客企業に不祥事が起きた場合などは、安易に認証の一時停止を行うのではなく、認証した審査登録機関の責任として、是正処置をしてもらった上で特別審査を行っています。万が一、特別審査を拒否された場合には、登録証の取り消しを行っています。こうした、厳格な姿勢を維持しているがゆえに、LRQAで認証取得された企業では、真に透明性、説明責任を持っていると、証明していただくことができるのです。


(掲載日:2006年4月1日)
   

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