【事業継続】事業継続マネジメントの基礎 BCM(1):新型インフルエンザ対策

1.感染防止対策とBCM

豚インフルエンザ(H1N1)が2009年4月末にメキシコで唐突に登場し、世界も日本も振り回されています。また、新聞やテレビの新型インフルエンザ報道には、「感染拡大防止対策」と「事業継続対策」の二つの言葉が良く出てきます。
これは、米国や豪州など、英語圏でも同様です。
感染拡大防止対策とは、手洗いの励行や咳エチケット、マスクの着用、体温チェック、発熱時における病院・自宅等での療養、出張の自粛等のことです。
また、「事業継続対策」とは、「事業継続マネジメント(BCM)」のことで、「感染拡大防止対策」とは下図の関係にあります。 「事業継続対策」とは、「事業継続マネジメント(BCM)」のことで、「感染拡大防止対策」とは次図の関係にあります。 

「BCMが必要な企業・組織」とは、厚生労働省が感染防止対策と並行してBCMの構築を推奨している「医療従事者・社会機能維持者等」を中心に、国内・国際市場で競争が激しい業界の企業・組織が加わり、具体的には、次のようになります。

BCMが必要な企業・組織

A. 医療従事者
医療従事者・救急隊員・医薬品製造販売業者等

B. 社会機能維持者
B.1 治安維持関係: 消防士、警察官、自衛隊員など
B.2 ライフライン関係: 電気、水道、ガス、石油、食料関係等
B.3 国又は地方公共団体の危機管理に携わる者
B.4 国民の最低限の生活維持のための情報提供に携わる者
B.5 輸送: 鉄道、道路、旅客・貨物輸送、航空、水運等

C.市場競争が激しい業界
ICT、電子、家電、太陽光関係、工作機械等

2.その目的

感染拡大防止対策の目的と、BCMの目的は次のとおり異なります。

2.1 感染拡大防止対策の目的

  • 新型インフルエンザにかからないようにする
  • 新型インフルエンザの感染拡大を防止する

2.2 BCMの目的

  • 新型インフルエンザの流行中も、医療機能を維持する
  • 新型インフルエンザの流行中も、社会機能を維持する
  • 新型インフルエンザの終息後も、マーケットシェアを維持する

両者は目的が違いますから、場合によっては「対立」生じます。例えば、感染拡大防止のためには、「学校閉鎖」のように「企業閉鎖」が良いのですが、企業閉鎖は経済活動の停止を意味しますから、電気・ガス・水道の供給が止まり、医薬品や食品の供給も止まることになります。
これでは、個人・家庭・社会が困りますから、個人・家庭・社会が困らない程度には経済活動を続ける必要があります。
この経済活動の継続は、感染防止の危険を冒すことになります。

従って、両者のバランスを考え、BCMは感染防止対策との対立を出来るだけ避け、言い換えれば、感染のリスクを最小化し、合理的に経済活動を継続する方法を企業・組織に提供することになります。

次回は、BCMSの構築について感染防止対策と比較しながら解説致します。 


事業継続マネジメントの基礎(BCM) コラム著者

LRQA ジャパン エキスパート 
一般社団法人レジリンス協会 理事 
黄野 吉博 


(掲載日:2009年7月10日)

    

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