【食品安全】GOMAME先生の食品コラム(1):もったいない・・・What a waste!

食品関連の講習会でよく「賞味期限が切れた冷凍食品が冷凍庫にありますが、食べて問題はありませんか」という質問をいただきます。
賞味期限とは、食品衛生法・JAS法で統一された用語(平成15年7月)で、農林水産省の ホームページでは、次のように説明されています。

賞味期限 Best-before おいしく食べることができる期限です。この期限を過ぎても、すぐ食べられないということではありません。
定義: 定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の 保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を 超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。

要は、「メーカーが科学的・論理的に決めた上、安全係数として約2/3を乗じた期限ですから、商品に表示された賞味期限が切れたからといって食べられなくなるものではない。判断は自分でしてください。」ということです。

先日、この説明をしましたら、若い主婦の方が「私たちは食べられなくなった食品を食べたことがないので、食べられるか否かの判断の基準がない」と言われました。
私の子供のころは母親がつまんで食べ、大丈夫か、料理をしなおすか、捨てるか、を判断していました。少し臭いのついたご飯は水洗いし、炒って砂糖をまぶし、あられとして食べた記憶があります。母親の官能検査が判断の手段でした。今のお母様方はいかがでしょう。

さて、同省ホームページには
食品を無駄にせず、環境のことも考えた食生活にしたいですね。賞味期限が切れてもその食品が直ちに食べられなくなる訳ではありません。こうした点を正しく理解していただき、廃棄等による社会的なコスト等も考慮しながら、買い物、保存等を行っていただくことは、食料の安定供給の観点のみならず、環境配慮の観点等からも望ましいことです。期限表示の意味を正しく理解して、これからも食品ロスを減らす努力も大切ですね。
とも記述されています。
日本の食品自給率1961年の78%から2003年には40%に減少しています。主要先進国の中で比較的自給率の低い英国が61年42%から03年70%、スイスは51%から62%に、ドイツは67%から84%に上昇したことから見ると異常と言わざるを得ません。

また、穀物の自給率は2003年度27%で北朝鮮の78%、降雨量の少ないペルーの59%(リマ近郊は年間10mm程度)と比べても非常に低いレベルです。
日本人は外国の食糧生産に半分以上を頼って生きているのです。

一方、環境省の2000年度調査によると、食品廃棄物は、食品製造業などから排出される分が年間405万トン、家庭と外食産業から廃棄される分は1800万トンで合計2200万トンと推定されています。このことは、農林水産省の食品ロス統計調査結果とほぼ同水準です。この廃棄される食品には、加工段階での返品・回収(食品事故のお詫び広告に「安全上は問題ないが自主回収する」という記述がよく見られます)
外食産業での食べ残し、流通段階での消費期限切れ(本来の消費期限を短縮して販売していないでしょうか)、家庭内の食べ残しなど、努力と工夫で減らせる廃棄ロスが含まれます。

食糧自給率の低い私たちの国は、年間6000万トンもの食糧を輸入する一方その1/3に相当する食品を廃棄しているのです。

食品産業の顧客は全国民といっても過言ではありません。ほとんどの食品企業の品質目標あるいは食品安全目標は「顧客の要求を満足する製品を提供する」と掲げていますが、顧客は食品の安定供給を基本に品質の満足を要求していると考えれば、目標の中に、「不良品の撲滅による食糧ロスの削減」「消費者教育を含む賞味期限の適切な運用による食糧事情の改善」「国産原料使用比率の向上による国内一次産業の支援」等、一企業利益だけではなくわが国の食糧事情や食品産業全体を考えた目標の設定が必要かと思います。

このことは食糧事情の改善や企業の業績向上ばかりではなく、フードマイレージ、加工に要するエネルギー等々CO2削減・地球温暖化防止にも大きく貢献すると信じています。
現状の食品廃棄率の50%低減、使用原料の国産比率50%以上を実行した企業に対する法的優遇政策を今回の選挙のマニフェストに盛り込んでくれる政党・立候補者を期待しています。

【追記】
このコラムを書き上げたと同時に、大手コンビニエンスストアーが「販売期限の迫った弁当などの値引き販売を認め、弁当などの売れ残りを捨てた場合、その分について、加盟店の仕入原価の15%(年間約100億円)を本部が負担する」との報道がありました。
販売期限迫った食品の値引きをしないよう加盟店に強制しているとの公正取引委員会の排除命令に対応した処置ですが、過剰生産・過剰仕入れを抑制し、貴重な資源を廃棄しない仕組を考えるのが本来の姿ではないかと思います。
15%が年間100億円に相当するということは、年間約700億円捨てられていたのですね。
フードサプライチェーンに携わる私たちは、子供や孫に「ご飯を無駄にするな。一粒残さず食べろ」と叱れる自信を持ち続けたいものです。米俵に座ったために、お百姓さんに叱られた水戸黄門様はどんな顔をして現世を眺めているのでしょうか。


(掲載日:2009年7月10日)

【GOMAME先生の食品コラム】
LRQA ジャパン所属の食品審査員が、当サイトにて書き下ろした食品にまつわるコラム(全6回)。ちなみに、ごまめ(GOMAME)とは、正月料理の「田作り」のことで、カタクチイワシの幼魚を生干したもの。

 

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