【エネルギー】エネルギーマネジメントシステム(2):省エネ法とISO/DIS 50001

前回、ISO 14001環境マネジメントシステムとの要求事項と比較して、ISO 50001(ISO/DIS 50001)として発行予定のエネルギーマネジメントシステムについて概要をお話ししましたが、今回はエネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)への対応に焦点を当ててその活用の可能性を検証していきます。

なお、2010年6月末現在、ISO 50001エネルギーマネジメントシステム規格は、DIS(Draft International Standard:国際規格原案)の段階ですので、規格の正式な発行までに変更される部分も多くあることをご了承下さい。

適用範囲

まず、最初に十分に理解しておく必要があるのは、省エネ法は、平成20年度(2008年)の改正によって、その適用範囲が事業所単位から、企業全体に変更されていることです。これに対して、エネルギーマネジメントシステムの適用範囲は、その決定を組織に委ねられているという点で大きな相違があります。

省エネ法への適合を実現する上で、エネルギーマネジメントシステムをどのように活用するか、組織はその適用の方法をまず明確に方向づける必要があります。すなわち、全社での省エネ(エネルギーマネジメント)を実現するためにこの規格を利用することもできますし、ある特定の事業所における省エネルギーの実現を組織の重要課題として捉え、特定の事業所のみでエネルギーマネジメントシステムを構築し、運用することも可能です。

また、省エネ法の対象は、燃料、熱、電気としていますが、廃棄物からの回収エネルギーや、有力、太陽光等の非化石エネルギーは、対象としていません。これに対して、ISO/DIS 50001で管理の対象とするエネルギーは、その起源を区別することなく、“電気、燃料、蒸気、熱、圧縮空気、再生可能な及びその他の類似の媒体”と定義していますので、省エネ法の規制の対象よりも範囲が広いことに注意が必要です。

しかしながら、組織が管理すべきエネルギーは事業活動に使用される全てのエネルギーであり、そのエネルギーの使用において法(省エネ法)の規制を満たさなければならないという原則を考えるならば、両者の適用範囲は、組織の活動において齟齬を来すようなものではないと考えられます。次に、単純化のため、組織全体でISO/DIS 50001を適用する場合を例にISO/DIS 50001の適用の可能性を検証していきます。

体制

ご存じの通り、改正省エネ法では、企業の事業経営に発言権を持つ役員クラスの者からエネルギー管理統括者を選任すること、エネルギー管理統括者を実務面で補佐するエネルギー管理企画推進者を選任すること、及びエネルギー指定管理工場ごとにエネルギー管理者もしくはエネルギー管理員を選任することを要求しています。関連してISO/DIS 50001では、エネルギーマネジメントの確立、実施、維持及び継続的改善に責任を持つ管理責任者を任命することを要求しています。また、この管理責任者の役割の一つには、組織の適切な階層からエネルギーマネジメントの活動に従事する要員を任命することが要求されています(図1 エネルギー管理体制の例 参照)。

エネルギー管理体制と省エネ法上の役割

他のマネジメントシステム、特に既に構築されている場合には環境マネジメントシステムの体制と整合してこれらの要求事項に対応したエネルギーマネジメント体制を構築し、導入することは、規制への対応/コストダウンのための省エネ活動から、エネルギー調達を事業継続の一つの重要要因として捉えた戦略的なエネルギーマネジメントの活動へと発展させる可能性があります。

達成基準

省エネ法では、事業者ごとに原単位年平均1%以上の低減(エネルギー使用の合理化)を要求しています。これに対して、ISO/DIS 50001では、エネルギーレビューの結果に基づいて、適切な期間を考慮してエネルギーベースラインを確立することを要求しています。また、このベースライン及び比較の根拠となるエネルギーパフォーマンス指標としては、原単位あたりの管理も認められていますので、省エネ法に整合したベースライン及びパフォーマンス指標を設定することによって、省エネ法への適合を達成し、その信頼度を向上させるためのツールとして利用することが可能です。

まとめ

ISO/DIS 50001の要求事項は、省エネ法への適合を達成するために十分な構成になっています。今回の省エネ法の改正には、エネルギー使用の合理化の取り組みを企業全体の経営課題として捉え、改善に向けた積極的な取り組みを求める趣旨が含まれています。この改正の目的の対応し、将来の規制に備えるための仕組みとして、ISO/DIS 50001が活用できる可能性は十分にあるようです。 

(掲載日:2010年7月2日)
   

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