【食品安全】異物混入(2):防虫対策

食品企業が避けて通れない異物対策の一つに防虫対策があると思います。異物対策や異物検定を行っている業者のデータでもお客様苦情の異物で一番多いのが、クモ等の節足動物を含む昆虫類となっています。さすが、全世界の生物の約80%を占める大所帯と言いたいところですが、企業側にとっては重大な問題です。

虫のクレームが多い理由としては、次のような虫の特性があるからではないでしょうか:

工場や家庭も含め、さまざまな場所に存在する。
製品を餌にする。
光や熱などの誘引源に集まる。
脚や触覚などがバラバラになりやすい。
以前は定期的に使用されていた殺虫剤も、それ自体が残留すれば問題になることから、「使用しない」あるいは「極力使用しない」組織が増えてきました。そのような状況の中、IPM(Integrated Pest Management:総合的防虫管理)という考え方が浸透してきました。IPMとは、もともと農業害虫対策の一環として行われてきたもので、「薬剤だけでなく、いろいろな方法を組み合わせて使用し、全滅ではなく、一定レベルにまで個体数を下げ、害虫駆除ではなく、防虫管理をしていく」というものです。現在さまざまな方法でIPMが行われていますが、共通しているのが調査を主に考えるという点です。

多くの食品工場では調査用および/または捕獲用としてさまざまなトラップが設置されています。歩行性昆虫のためのゴキブリ取り型のものや紫外線によって誘引するライトトラップ、また、ある特定の虫を集めるフェロモントラップなどがあります。

そこで、問題です。皆さんはトラップからどのような情報を得ていますか?

最も多い答えは、「定期的に捕獲数を調べて、ある係数よりも高くなったら、何らかのアクションを起こす」ではないでしょうか。これは、先のIPMの考え方に即したものです。そして、アクションも整理・整頓・清掃といった意識的対策、パーテーションやコーキングなどの物理的対策、並びに殺虫剤や忌避剤の化学的対策を組み合わせて行われているでしょう。

もう一歩進めて、捕獲されている状況を確認してみてください。トラップ全体を考えると、発生源や侵入口にあるトラップで最も多く捕獲されます。一つ一つのトラップで見ても、発生源や侵入口がある側の方での捕獲密度が高くなる傾向にあります。
例えば、上下に捕虫紙がついているタイプのライトトラップがあります。下に同じ種類(しかも内部で発生する虫)が多く捕獲されていれば、発生源は下にあると推定できます。同じように左右で比較して左に多ければ、左に発生源があると推定されます。このような傾向を他のトラップでも確認してみると、発生源が特定されたり、可能性がある箇所を絞り込めたりします。

最後に、防虫対策が成功するかしないかは、発生源などの問題原因箇所を特定出来るか出来ないかにあります。そのためには、相手、つまり虫の生態や習性を知る必要があります。例えば、有翅チャタテは、湿度は好みますが、水がかかることは嫌うといわれていますので、発生源は壁の亀裂や機械の中であることが多いです。ユスリカには、水が流れる所で生息できる種類と、生息できない種類がありますので、捕獲される種類によって発生源が変わります。「緑地発生=外部侵入」と考えることも危険であり、工場内に何らかの要因で土が堆積すると、そこから発生することもあるようです。

最後になりますが、虫の混入事故をゼロにすることは無理だと思います。ただし、ゼロを目指してさまざまな取り組みを行うことは必要だと思います。より効果のある対策を実施していきましょう。

(掲載日:2010年10月6日)

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