【食品安全】臭い対策(2):異臭クレームと酵母

我が国では古来より酵母と麹を日本酒や味噌、醤油の醸造に利用してきました。皆さんがご承知のようにパンの発酵やビール、ワインの醸造にも酵母が使われ有用な微生物の一つです。また、ビール酵母は胃腸薬や調味料酵母エキスとしても使用されています。
酵母は植物の葉、花、樹液或いは土壌、海水、淡水等自然界に広く分布していて、生鮮原料や原材料の外包材に付着して工場内に持ち込まれて食品を汚染することがあります。

東京都の調査によると、総菜、菓子、生麩から酵母の検出頻度が高いそうです。

表1 酵母汚染が90%以上を占める加熱食品
食品名 検体汚染率% 検出菌数/g
魚肉練り製品、洋生菓子 50~60 104
佃煮 50~60 103
茹うどん 30~40 102
惣菜 80~90 102
「食品のカビ汚染と防止対策」諸角他、東京都健康安全研究センター年報2004


じっくりと煮込むはずの佃煮の半分以上に酵母汚染があるとは驚きです。

みなさんは、酵母が原因だとされる異臭クレームをご存知でしょうか?
次に二つの例をご紹介します。

■ 「シンナー臭」

酵母が食品で増殖し、エチルアルコールから酢酸エチルをが産生されて、シンナー臭のクレームになったものです。これらから、ハンゼヌラ属酵母(Pichia anomala)が検出されます。

苦情食品としては、牛丼、寿司弁当、いなりずし、うどん、そば、生めん、佃煮、れんこんの炒め物、粒餡入りよもぎ団子、福神漬、生パン粉など、様々な食品でシンナー臭クレームが発生しています。(酢酸エチル濃度450~1100㎍/g)

■「石油臭」

シナモン抽出物を使った和菓子で、石油臭(スチレン臭)のクレームがあります。これは、シナモン抽出物の主成分である桂皮酸から、酵母(サッカロミセス、ピキア、カンジダ等)の脱炭酸酵素の働きで、スチレンを生成したためと報告されています。

酵母汚染対策は、1)汚さない、2)取除く、3)増やさないの三つが基本です。酵母で汚染された機器は、清酒様の甘い匂いがします。そこで、五感を使った始業時点検も必要です。

1) 汚さない

加熱後の食品が接触する表面(手指、用具・容器、作業台等)からの、酵母汚染を防止することです。機器使用後及び生産終了時の洗浄殺菌手順を定めます。

2) 取除く

加熱調理は70℃・1分間以上。洗浄殺菌の手順実施後の糖類や、タンパク質拭取りテスト(モニタリング)で、手順が効果的であることを確認します。|

3) 増やさない

洗浄後の機器の乾燥(熱湯殺菌90℃・5分、乾燥)、次亜塩素酸液への浸漬、紫外線殺菌照射(650μW/min/cm2)等を組み合わせます。特に、酵母対策では不十分な洗浄後のアルコール散布は、アルコール耐性酵母を選択的に増やす恐れがありますので注意が肝要です。

(掲載日:2011年2月3日)

関連コラム一覧 <開く>

コラム

全てのコラムを表示

【食品安全】お客様は「神様」:「信念に基づく消費」が、グローバルな食品サプライチェーンの持続可能性を牽引する

世界の食品産業は、21世紀に入ってパラダイムシフトを経験しました。小売業者と製造業者による世界食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)は、諸規格の調和に加えて、国際的な第三者による評価および認証の信頼性向上を目指す方向へと舵を切りました。