【食品安全】臭い対策(3):腐敗変敗の技術的知見、または腐敗変敗の制御

食品と微生物 腐敗変敗 その1

食品の腐敗は微生物、変敗は生物学的、化学的、物理的な要因が重なり発生します。
食品衛生法第6条「販売等を禁止される食品および添加物」では、人の健康を損なう恐れがある「次に掲げる食品または添加物を販売しあるいは販売のために採取し、製造し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し若しくは陳列してはならない。」と定めています。

  1. 腐敗、変敗または未熟であるもの
  2. 有毒若しくは有害物質が含有または付着したもの
  3. 病原微生物による汚染または疑いがあるもの
  4. 不潔、異物の混入いたもの

食品を取り扱うほとんどの企業で腐敗または変敗の消費者クレームを経験していると思いますが、対策や是正措置を検討するための情報量は3、2、4、1の順で、特に腐敗の技術的情報が少ないと感じている品質管理担当者が多いのではないでしょうか。

そこで、腐敗菌に関連する技術的知見のいくつかをご紹介します。

一般的に腐敗が進むとガスが発生して、容器包装製品では膨張が起こり発見されます。しかし、フラットサワーと呼ばれるガス発生を伴わない酸敗、粘度低下あるいは離水の場合は開封するまで気がつかない場合があります。

  • 膨張に関与する代表的微生物 : 酵母、乳酸菌、好気性芽胞菌、嫌気性芽胞菌
  • 代表的なフラットサワー菌 : 非酸性食品B. stearothermophilus、酸性食品B. coagulans, B. thermoacidurans

膨張以外にも食品中で微生物が増殖して腐敗変敗現象が起こりクレームの原因になります。

表1 代表的な微生物の腐敗変敗現象

食品と微生物 腐敗変敗 その2

腐敗変敗の原因になる微生物の制御手段としては、加熱殺菌、製品のpHや水分活性、有機酸等の抗菌物質添加があげられます。
市販されている食品の多くは調理加熱されますが、個々の微生物が持つ熱抵抗性のデータに基づいて加熱温度と温度維持時間を決める必要があります。

表2 食品pH別の管理すべき腐敗変敗微生物の熱抵抗性

製品のpHにより制御しなければならない腐敗変敗菌を、区分することができます。  感染型病原菌および黄色ブドウ球菌の最低生育pHは、4.0~5.0、pH4未満では生育しません。また、毒素産生芽胞菌の最低生育pHは、4.6~5.5で、pH4.6未満では生育できません。

pH4.6以下でも生育できる胞子形成腐敗変敗菌も、pH4未満では生育できません。ただし、酪酸菌(C. pasteurianum)の中にはpH3.75でも生育する種類があるという報告があります。

pH4未満で生育する腐敗変敗菌(酵母・乳酸菌・かび)の内で、果汁飲料中のアシドテレストリスと子嚢胞子かびニヴェアを除いては75℃・3分間の加熱で1千万分の1に減少させることができまので、加熱後にこれ等の腐敗変敗菌を付着させない作業環境と食品の取扱いが大切です。

食品と微生物 腐敗変敗 その3

ア)加熱による制御

容器包装に密封したpHが4.6を超え、かつ、水分活性が0.94をこえる食品は毒素産生病原菌(ボツリヌス、ウエルシュ、セレウス)を制御するため120℃・4分間以上の加熱か、10℃以下で流通することが通達で求められています。(「容器包装詰低酸性食品に対するボツリヌス食中毒対策について」H20.06.17付)

公衆衛生上は120℃・4分ですが、腐敗変敗菌を含め貯蔵保管上は120℃・8分間以上の加熱が必要です。 また、10℃以下で流通させる場合であっても最低生育温度が3℃であるボツリヌス菌E型を死滅させるために80℃・10分間以上加熱した方が良いでしょう。

pHが4.0~4.6未満の食品ではフラットサワー菌を除いて100℃・3分間相当の加熱が必要です。もしも、真空包装食品でフラットサワー菌を制御する必要があれば100℃・30分間以上加熱しなければなりません。 pH4未満の食品では食中毒菌は生育しませんので腐敗変敗菌が制御の対象になります。 果汁飲料中のアシドテレストリスは100℃・10分間、98℃・17分間の加熱が必要です。 子嚢胞子かびニヴェアは、100℃・0.6分間、90℃・10分間の加熱が必要です。

リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酢酸等の有機酸が存在すると熱抵抗性が低くなるという報告があり食品を酸性化する際には開発段階で組合せの検討が大切になります。 加熱殺菌で生き残った耐熱菌の生育を抑制する食品添加物も数多く市販されていますから製品に合わせて選択利用することをお勧めします。


イ)原材料の選択あるいは事前処理による制御

胞子形成耐熱菌は、濃縮工程を経た原料、熱風乾燥を経た原料、風味を生かすため熱殺菌しない香辛料原料等に由来します。また、土埃からも汚染され穀類、豆、野菜等からも製品に持ち込まれますので洗浄が大切です。 原材料の仕様書を明確にして、耐熱菌の上限を決めて原料を購入する、また、原産国により菌種が変わることがあるので原産地を指定する等の予防措置が必要になります。

もしも、指定が困難な場合には汚染の可能性がある原料毎に、濾過、紫外線殺菌、予備加熱等の措置を取ることで、製品の高温長時間加熱を避けることができます。 電気冷蔵庫が家庭に普及する以前では食材の残り物には必ず火を入れていました。 耐熱性芽胞は加熱され80℃を超えると刺激を受け、冷却が始まり生菌になっても死なない55℃前後で発芽を開始します。発芽して1時間以内に30%、3時間以内に100%生菌(vegetable cell)に変わり増殖ができる状態になるといわれています。

処理した食材を2,3時間後に再加熱することは、非胞子性の腐敗菌と同程度の熱抵抗性に変化した腐敗変敗菌を死滅させ、食材の腐敗変敗を防ぐ科学的な方法だったのです。

低塩、低糖傾向で食品の水分活性が上がり微生物が繁殖しやすい製品が求められる時代です。

微生物事故発生を予防するには、製品特性(理化学的、流通温度、包装形態等)の把握と危害要因分析(HACCP)の実施が、食品企業の常識になったことを認識してください。

(掲載日:2011年3月2日)

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