【食品安全】食品産業の課題(6):小売・ケータリングと食品安全

ISO 22000:2005序文の図1にフードチェーン内のコミュニケーションの例が示され、消費者に一番近い位置付けとして小売業者(Retailers)、食品サービス業者(Food service operator)ケータリング業者(Caterers)が記述されています。

ISO 22000 食品安全マネジメントシステム フードチェーン内のコミュニケーション例

食品サービス業者は主として、一般消費者は対象とせず、中小の飲食店や食品小売店、給食業者などに食品や酒などを卸売りする業者であり、ケータリング業者は調理設備を備えた車両などを顧客の下に持参して食物を提供するサービス、またはその場にある台所で食事を用意して、食卓に配膳したり、ビュッフェ形式で提供するサービスを意味します。

小売業者は有店舗販売(百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、各種専門店等)と無店舗販売(通信販売、移動販売、訪問販売等)に大別され、有店舗販売の中には製造小売業と言われる同一事業所で商品製造及び、個人への商品販売を行う形態があり、パン屋、お菓子屋、豆腐屋、弁当屋等が相当します。

無店舗販売の典型である通信販売は製造委託先(または製品の購買先)の管理をISO 22000のアウトソースに従って管理します。有店舗販売の調理(または製造、バックヤードを含む)及び販売の管理については、英国の食品基準庁(Food Standards Agency) が公開しているFood hygiene training videos online(2012年5月14日付)が参考になると思います。

リンク:Food hygiene training videos online (英文)

製造小売業は食品製造業に比べ管理が必要なプロセスが多く存在します。例えば、学校・病院等を顧客とした弁当宅配業者は原料・資材の購買、受け入れ検査、原料保存、調理、盛り付け、最終製品検査、配送、空容器の回収・洗浄・再使用のプロセス等フードチェーンの大半のプロセスを一つの組織で管理することになります。また、食品防御の観点から配送時における管理、配送後の製品保存に関する顧客への教育も組織の責任として実施しなければなりません。弁当宅配業とケータリングは自店舗以外の場所に食事を提供する意味では共通のリスク管理が必要ですが、弁当宅配業は自店舗での調理に対し、ケータリングは顧客の場所で調理するためにレストランに近い管理が必要です。

製造小売業やケータリングサービスは一般的に中小規模の組織が多く、少ない人数で広い守備範囲を求められていますが、反面、大規模組織と違い組織のトップの目が末端まで行き届くという利点があります。

ISO 22000(またはFSSC 22000)の適用により、トップが実施している現在の仕事の仕組み(マネジメントシステム)を見える様(文書化)にすることで、組織を挙げて改善に取り組むことができ、論理的・科学的に整理することで第3者に説明できる仕組みが構築できます。この規格は、トップの個人的管理を組織としての活動に変えていくための有効なツールです。

追記:

上述の英国の食品基準庁(Food Standards Agency)ウェブページのヘッダーに”Safer food, better business”と記されていました。普段リスクのない食品はないと言いながら、「安全な食品」と言い切り、「安心な食品」という情緒的な言葉を組み合わせ、「安全・安心な食品の提供」という表現を日常的に用いていますが、正しくは「より安全な食品と安心して戴くための充分な情報の提供」の思いを強くしました。


(掲載日:2012年6月29日)

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