【食品安全】食品産業の課題(1):グローバル化に向けて

「食料安全保障」とは「食料の入手可能性とその方向に関する国家レベルの事項」「国内外の様々な要因によって食料供給の混乱が生じる可能性があり、このような場合のために食料供給を確保するための対策や、その機動的なあり方を検討し、いざというときのための準備を日頃から準備しておく」と定義されています。
日本の食料事情に関しては、「自給率(カロリーベース)40%で日本の食料確保は大変な状況にある」という説と「いや、日本の農業は生産高8兆円で世界第5位の農業国であり休耕地も多く問題ない」という説がありますが、平成21年度の農水省の統計によれば、日本の自給率はカロリーベースで39%、生産高ベースで69%と発表されています。 2010年の農林水産物輸入額7兆1194億円に対し、農林水産物の輸出額は4920億円で、2020年までに輸出額1兆円を目指すのが、政府で力を入れている「輸出倍増計画」です。 食料の安定的確保と農業発展のための輸出振興の実現が望まれます。

日本の食品産業は長い間、自国の原料を用い、自国内で生産し、自国の市場(消費者)に提供する仕組みの中で活動してきました。そのため、国際的視野に立った生産の仕組みは他産業に比べ残念ですが遅れていると言わざるを得ません。
食品安全については、欧米諸国は他国と地続きのため、他国の問題が直ちに自国に影響します。従って、お互いに同じ仕組みで食品安全を管理することが求められます。 それに対し、四方を海に囲まれた日本は「海は自国を守る壁」として考えていましたが、交通機関や情報網が発達した現在はこの考えが通用しません。これだけ輸入量が増えればもはや水際で食品の安全を確保することは困難です。 また、食品産業自体も海外に原料や労働力を求め、グローバル化(製造拠点の海外進出を含め)を進めざるを得なくなっています。日本人の特性や日本的経営を基本とした食品産業のマネジメントの仕組みを、そのままグローバルの仕組みとするには課題が多すぎます。 この様に、今の日本は食料安全保障と食品安全の両面から課題を抱えているわけです。

日本では2000年に入り食品事故、産地偽装等多くの食品安全に関する問題が発生し、消費者の食品安全に関する意識が急激に高まりましたが、ほとんど同時に海外でもBSE、鳥インフルエンザ、輸入品事故等グローバルな視点からか解決すべき課題が増え世界的に食品安全への関心が高まりました。
これら等の状況を受け、ISO 9001:2000を食品安全に特化した国際規格として2005年にISO 22000:2005が発行され、更にこの規格要求事項7.5(PRPs)を補強したPAS 220:2008(ISO/TS 22002-1:2009)と併せたFSSC 22000:2010が世界共通の食品安全マネジメントシステムとして発行されました。

今話題のTPP(環太平洋経済連携協定)の締結には賛否両論がありますが、食料安全保障と食品安全のボーダレス化、グローバル化の必要性はTPPとは関係なく直ぐそこまで迫っています。 今、私たちに出来ることは日本の食料安全保障と食品安全のためには、世界に共通した食品安全マネジメントシステムを構築し、世界共通の理念の基にグローバルビジネスを展開できる準備をしておくことです。

今回から数回にわたり、この様な業界を取り巻く環境に対し、我々食品産業は何をなすべきかについて、皆様と一緒に考えたいと思います。

(掲載日:2012年2月1日)

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