【鉄道】IRIS(国際鉄道産業標準)とRAMS(1):RAMSの特徴と概念

はじめに

筆者は、ISO 9001及びIRIS(国際鉄道産業標準)の審査員として活動しています。このコラムでは、RAMSについてその背景や実際のRAMS活動の概要について紹介します。特に海外案件を受注したい組織にとってRAMS規格が一般的に定着していることから、国内案件との差に戸惑うケースも増えています。私が、審査を担当しているIRIS規格は、マネジメントシステム規格として唯一、RAMSを設計インプットとして要求しています。RAMSは、鉄道システム全体の評価手法であり、部品メーカーやサブシステム(車両、電気、軌道、運行システム、駆動・制御システム及びブレーキシステム等)の評価も可能にします。海外案件の場合は、車両メーカーが主契約者として、発注者である「鉄道事業者」からの「RAMS要求事項」を分析することから始まります。主契約者は、サブシステムを担当する供給者に対してRAMS要求事項を分担させます。国内案件のケースでは、多くの場合鉄道事業者がシステム全体の設計も行っており、車両メーカーはサブシステムの供給者として位置づけられているのが特徴です。

RAMSとは?

RAMSは、Reliability (信頼性)、Availability (アベイラビリティ)、Maintainability (保全性)、Safety (安全性)の組合せを意味する略語です。RAMSは、1999年鉄道RAMS欧州規格(EN 50126)として制定され、その後2002年に国際規格(IEC 50126)として制定されました。RAMS の中でAvailability (アベイラビリティ)は、可用性とも訳されますが、評価する対象により稼働率となることもあります。したがって、アベイラビリティと表現することが多くなっています。安全性とアベイラビリティのどちらかに弱点がある場合や、双方の要求事項に矛盾が出た場合の処理がまずいと、信頼できるシステムの実現が妨げられる可能性があります。そういう意味では、安全性とアベイラビリティは相互に密接に関連します。鉄道RAMSの要素である信頼性、アベイラビリティ、保全性、安全性の相関関係は、IEC 50126では下図で示されています。これら4つの指標に対して鉄道システムが達成すべき目標値を定め、その目標が達成可能であることを証明し、さらに達成していることを稼働後に実証することも求められています。

RAMSの背景

1993年にEUがRAMSを成立し、発足とともにEU内で鉄道産業の鉄道政策と国境を横断した相互運用の必要性から1991年「共同体の鉄道の発展に関する指令91・440」が公布されました。

目的は、

  1. 各国の鉄道事業者の経営の独立(民営化)
  2. 鉄道インフラ事業と運行・輸送業務の分離
  3. 鉄道事業者の財政状況の改善
  4. 鉄道事業者へのインフラ(鉄道線路)の使用権の付与

等があげられます。

同時に、イギリス、ドイツ等、各国鉄道事業の民営化推進や事業の合理化推進、コスト低減に伴う一括発注、メンテナンスの外注等を目的とする業界の再編が起こりました。その結果、シーメンス, アルストーム, ボンバルディアのビッグスリー体制が生まれました。

RAMS規格の特徴

RAMSは、構想段階から役割を終えて処分されるまでの全期間、つまり鉄道システムのライフサイクルを考慮した規格として制定されています。鉄道システムに対して起こり得るハザード(障害、危険性)を理論的に分析し、それに起因する事故に至る経過を解析し、それに伴うリスクを数値化することによって、そのシステムが製品のライフサイクルを通して、経済性と照らし合わせて許容されるリスク内に維持できることを論証する手法が規定されています。RAMSの特徴をまとめると以下のようになります。

  1. 鉄道事業者と鉄道関連企業に対して、信頼性・アベイラビリティ・保全性・安全性の管理に首尾一貫して取り組むことを可能にするプロセスを提供する。
  2. 鉄道事業者と鉄道関連企業が、鉄道固有のRAMS要求事項を展開し、その要求事項を遵守するために、鉄道システムのライフサイクルのあらゆる段階で体系的に適用することが可能である。 
  3. RAMS管理の概念を理解し、RAMS管理に取り組むことを奨励することにある。
  4. 国際標準規格のISO 9000シリーズにある品質マネジメントの要求事項の適用と整合性を持つ。

RAMSの概念(鉄道RAMSの場合)

RAMSは、“RAM”と“S”を分けて考えられることが一般的に行われています。つまり“信頼性、アベイラビリティ、保全性”と“安全”です。IEC 62278 (EN 50126)では、鉄道RAMSの要素の相関関係を次の図で表しています。

鉄道RAMSの構成

  • 安全性とアベイラビリティ・・・安全性とアベイラビリティは相互に関連している。
  • 信頼性と保全性・・・信頼性と保全性の要求事項をすべて満たす。
  • 運用と保全・・・継続的な長期的保全・運用活動とシステム環境を制御する。

“RAM”の場合、まず信頼性が基本になります。鉄道車両を例にとると、信頼性の指標は「故障率」と考えられます。電車が故障すると修理が必要となります。修理は、“RAM”で言うところの保全性に当たります。故障しても故障個所の発見が容易で且つ修理しやすい設計であれば、費用を最小限に抑えることができます。これが、LCC(Life Cycle Cost)につながります。システムライフサイクルは、IEC 62278 (EN 50126)規格では、以下のように規定されています。

  • 最初の構想から使用中止と廃棄にいたるまで。
  • システムのトータルライフを包含する一連の段階であり、段階ごとに課業がある。
  • システムライフサイクルは、決められた時間内に適切な製品を妥当な価格で供給するために、システムが各段階を進んでいく間、RAMSをはじめとするシステムのあらゆる側面を計画、管理、制御、監視する体制を整える。
  • ライフサイクルの概念は本規格の順調な実施に必須である。

特に鉄道事業者にとっては、このアベイラビリティが重要な指標となります。ある鉄道路線で、100両の車両が必要な場合、アベイラビリティ(この場合は正常に運行できる車両数)が、90%であれば110車両必要となります。アベイラビリティを上げることは、経営上も有利に働くことになります。新規に開発する車両の故障率(信頼性)、アベイラビリティ及び保全性について定量的な把握が可能なら、余分な車両を持つ必要が無くなり効率的な運行が可能になります。


(掲載日:2012年4月25日)

関連コラム一覧 <開く>

コラム

全てのコラムを表示

【自動車機能安全】ISO 26262寄稿シリーズ(5): ISO 26262の欧州の現状

先日、LRQAの横浜オフィスにLRQAのサポートを受けアジアでのサービスを展開しているMIRA社のデイビッド氏(写真左)と、組込みソフトウェア開発や機能安全規格教育研修の共同開発や実施にご協力頂いている株式会社東陽テクニカの二上氏(写真右)にお越し頂き、ISO 26262関連及びMISRA(Motor Industry Software Reliability Association)に関するミーティングを実施しました。

【鉄道】鉄道産業の現状と国際標準(2):IRIS規格、要求事項の概要

IRIS規格は認証のプロセスと審査方法に特徴があるため、これらの内容を各々第1章及び第2章で説明し、最後の第3章でシステム要求事項(0項~8項)を述べています。さらに、鉄道製品分類を示した『IRIS適用範囲』や、『IRIS審査工数』など、7件の附属書を加えて規格は構成されています。

【自動車】QMSファミリー セクター規格(1): ISO/TS 16949解説

自動車産業では、製品が安全と直結していることから、不良品ゼロが至上命題となっています。ISO 9001に比べ、より高度かつ多角的な品質管理が行える、自動車産業セクター規格ISO/TS 16949の認証取得が求められるようになっているのです。


お問合せ

ロイド レジスター  Lloyd's Register
マネジメントシステム
ジャパン マーケティング チーム  
Tel: 045-670-7447 Fax: 045-682-5289 
E-mail:   LRQA-Japan-Marketing@lrqa.com