【環境/検証/CSR】貴社の環境戦略は、グローバルな流れに乗り遅れていませんか?

LRQA ジャパン EMS&GHGマネージャー 主任審査員/GHG主任検証員 飯尾 隆弘

LRQA ジャパン 

EMS&GHGマネジャー
主任審査員/GHG主任検証員
飯尾 隆弘

サプライチェーン管理や資源問題、さらにはCSRリスクの管理まで・・・
今、世界では企業の環境戦略が、劇的に進展。

日本企業の環境活動は世界でも先進的だとお考えの方も多いかもしれませんが、実は欧米やアジアの海外企業の方が幅広い取り組みを進めており、日本企業はグローバルの流れに乗り遅れているのが現状です。 今後、国際的な競争力を日本が維持・向上していくためにも、貴社の環境戦略をもう一度見直すべき時期にきているかもしれません。

世界では、環境対策の枠組みが激変している

京都議定書の第一次約束期間の最終年となる今年、CO2マイナス6%という削減目標が達成されることが見込まれています。また、東日本大震災以降に節電が切実な問題となる中、社会的な環境意識はさらに高まり、各企業でもその取り組みが進展しています。ISOについても、ISO 14001はもはや当たり前の取り組みで、エネルギーマネジメントシステム規格であるISO 50001が注目を集めています。改正省エネ法も完全施行から2年が経ち、より企業活動に根付いており、“自社の環境対応はある程度のレベルに達している”とお考えの方も多いのではないでしょうか。しかし、世界的な流れに目を向けたとき、貴社の環境戦略が十分なものだとは確信できないかもしれません。

そもそも、日本における環境対策は、大気汚染などの公害問題への対応がベースとなっており、現在はこれに地球温暖化対策を加えている状況です。一方、世界的な流れを見ると、よりドラスチックに変化しており、水問題や資源枯渇、サプライチェーンの環境リスクの管理まで、日本よりも幅広い視点での環境対応を進めているのです。

サプライチェーン全体の環境リスク管理が求められる時代に

世界的な環境対応の流れを象徴するひとつは、温室効果ガス算定・開示の基準を開発しているGHGプロトコルイニシアチブが、新たに策定した「スコープ3基準」です。工場や事務所など自社が直接的に排出している温室効果ガスを算定するのが「スコープ1」、電力などの2次エネルギーの使用によって間接的に排出する温室効果ガスを算定するのが「スコープ2」。いずれもGHGプロトコルイニシアチブが開発した基準で、すでに温対法や改正省エネ法で報告義務とされているなど、世界的な算定基準となっています。

さらに、今回策定された「スコープ3」は、自社の排出量だけではなくサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量までを算定する基準です。例えば、製造業の場合、自社の製造工程における排出量に加えて、原材料の採掘や生産・輸送、資本設備やリース資産など上流側の製造工程、社員の通勤や出張、さらには、製品の保管・輸送、使用、廃棄、リサイクルまでの排出量の算定が必要となります。サプライヤーの環境リスクの管理やサプライチェーン全体の算定システムが構築できていないという企業がほとんどだと思いますが、「スコープ1」「スコープ2」が当たり前となった実績から、「スコープ3」についても、世界的なスタンダードになっていくことが予想されています。

オゾン層破壊、生態毒性、資源枯渇など包括的な環境対応を迫られる

さらに、「スコープ3」を加速させるような動きがあります。機関投資家が連携して運営し、ロンドンに事務所を置く非営利団体 CDPが、FTSEインデックスに該当する中から選定をした企業に対して環境戦略や温室効果ガス排出量などの公表を求めている、「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」。LRQAが戦略的パートナーを務めるこのCDPは、世界の先進企業、日本では500社に情報開示を求めて質問状を送り、その回答を分析・評価して、投資家へ開示しています。回答しなければ、回答がなかったこともリストに記載されるため、投資家からの評価が落ちる可能性があります。もはや、日本の企業でも避けて通れないプロジェクトとなってきています。このCDPでも、「スコープ3」のサプライチェーン管理についての情報開示を求める取り組みが始まりました。さらに、CDPでは、「スコープ3」のみならず、世界的な課題となっている水問題など、日本企業の盲点を突くような環境対応の情報開示を展開してきています。

これ以外にも、EUの環境総局が開発し、気候変動、オゾン層破壊、生態毒性、資源枯渇など、さらに幅広く製品のライフサイクルにおける環境影響全般を評価する「環境フットプリント」も大きな注目を集めています。すでに、ISO化の動きもあり、EU内の政府・公共機関のグリーン調達の基準にも盛り込まれると、一気に普及していくことも考えられます。

これまでの日本の環境戦略では、ガラパゴス化する恐れが

不安定な状態が続くこのように環境対応の世界的な枠組みが、ここ数年で激変している中、“改正省エネ法などの国内規制に対応していれば問題ない”“サプライチェーンまで管理しきれないし、欧米の取り組みにすぎない”“中小企業はあまり関係がない”とお考えの企業も多いかもしれません。しかし、指定有害物質が製品に含有されると違法になる欧州RoHS指令では、2006年の施行前後に、日本の電機メーカーもEU内での販売停止やブランドイメージ低下を恐れて、指定有害物質が含まれていないかを、サプライヤーを含めて徹底的に調査するなどの対応に追われました。同じように、「スコープ3」や「環境フットプリント」についても、欧米などで規制された場合、サプライチェーン全体で早急かつ徹底した取り組みが必要となります。

グローバル展開している大手企業は、こうした動きについていかなければ、国際的な競争力を低下させるリスクとなるでしょう。また、大手企業がサプライチェーンの管理に取り組み環境対応を取引条件とした場合、中小企業でも対応しなければ取引停止の恐れすらあるでしょう。もはやあらゆる企業で、グローバル基準にいち早い対応をしていくことが、競争力を維持していくために重要だといえます。

「スコープ3」で求められるサプライチェーンの温室効果ガス排出量管理

環境のみならず、CSR全般のリスク管理までが不可欠に

2000年代に大手企業を中心として環境報告書が続々と発行されましたが、その後、報告内容の幅を広げ、企業の社会的責任への取り組みをレポートするCSR報告書へとシフトしていきました。そして今、これと同じように、環境対応だけではなく、CSRへの対応まで求められようとしています。その一例が、「EICC(電子業界行動規範)」です。

「EICC」は、ヒューレット・パッカード、IBM、Dellの米国の大手IT企業3社やソニーなどが、部品メーカーをはじめとするサプライヤーに対して社会的責任に関する行動指針を定めたものです。労働、安全衛生、環境保全、ガバナンス、倫理の5つの項目から成り立っており、企業活動全般に及ぶ行動規範が求められています。特筆すべきは、「EICC」が自社のみならずサプライチェーン全体で、行動規範を順守することを要求していること。そして、現在では「EICC」を順守することが取引の前提条件となってきており、電子業界では必須の取り組みとなっています。

日本では当たり前が、世界のサプライヤーでは当たり前ではない

今、知っておくべき(取り組むべき)5つのキーワードまた、他の業界でも同じような動きがあります。イオングループでは「イオンサプライヤーCoC(取引行動規範)」を策定。児童労働、強制労働、安全衛生、差別、環境、経営責任など、13項目からなる行動規範となっており、CoCの順守を求めています。 

「EICC」や「イオンサプライヤーCoC」のような行動規範では、例えば労働に関する項目として“児童労働の禁止”“強制労働の禁止”“紛争地の資源利用の禁止”といった項目が含まれています。日本では当たり前に守られているとも思われる項目も、世界のサプライヤーでは当たり前ではないことが多く、順守できていない項目は珍しくないのが、実情なのです。

こうしたCSRの行動規範は、現在、業界、企業単位での取り組みが進んでいますが、環境対応と同じように、ひとたび大手企業が取引条件にした場合、中小企業での対応も必須となります。足元をすくわれずに健全な成長を続けていくためには、今からでも対応できる体制にしていかなければならないでしょう。

これまでの環境対応/これからは環境の枠を超えてCSRリスクの管理が求められる

「把握・管理・開示」を徹底することが重要

こうした環境やCSRに関するグローバルな動きに対して、何らかのアクションが必要になっていることはお分かりいただけたかと思います。では、激変する状況に、どのように対応していけばよいのでしょうか。

まず、グローバルな動きを他人事だと考えず「自分ごと化」すること。まだ規制されていないとしても、いち早く取り組むことが顧客からの信頼にもつながります。そして、現状を「把握」して見える化すること。自社に限らずサプライヤーも含めて、どのようにモノをつくり運んでいるかを、的確に把握しなければなりません。そのために、環境部門だけではなく購買部門、人事部門、安全衛生部門など、全社的な体制で取り組んでいくことが必要です。

さらに、環境・CSRのリスクを見える化しておけば、自ずと改善策が見い出せるはずですから、それを適切に「管理」して、改善していかなければなりません。そして、「管理」したら、せっかくの取り組みも評価されなければ意味がありませんから、情報を、より効果的に「開示」して、確実にステークホルダーに伝えることが必要です。「CDP」を見ても分かる通り、今や、環境・CSRの取り組みが投資に影響を与えるようになっています。健全に成長していくために、「把握・管理・開示」への取り組みが求められているのです。なお、CSRリスクの管理に関しては、ISO 26001(企業の社会的責任のガイドライン)をひとつの基準として、取り組んでいくこともオススメです。

LRQA ジャパンが環境戦略をサポート

こうした動きに合わせてLRQAジャパンでは、様々なサポートを展開しています。単にCO2排出量の検証だけではなく、製品の製造から輸送、廃棄に至るまでのCO2排出量を見える化する「カーボンフットプリント」の検証も行っています。今回取り上げた「CDP」「スコープ3」のサプライチェーン管理についても、2012年6月には初の検証を終える予定です。CSRリスクの管理についても、CSR報告書の検証を提供しており、CSRリスクをどう管理しているかを、公平な立場から検証し、信頼性を証明しています。

また、グローバルなネットワークを持ち、専門機関とも連携しながら、最新の情報を提供することができます。もちろん、これまでのISO 9001やISO 14001、ISO 50001などの審査の中で、様々なリスクに対する指摘も行っており、ビジネスアシュアランスの審査手法で、CSRリスクに重点を置いて審査を行うことも可能です。貴社の環境戦略をトータルでサポートします。

激変する世界の動きに取り残されず、幅の広がる環境リスクやCSRリスクを管理して健全な成長を続けていただくために、ぜひ、LRQA ジャパンにご相談ください。

取材日(2012年4月17日)

LRQA ジャパンが提供する「環境戦略のトータルサポート」


(掲載日:2012年06月29日)

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