【品質】2015年改定予定 ISO 9001にリスク管理が導入され、さらにビジネスに役立つ仕組みに。

LRQA ジャパン テクニカルオペレーションマネジャー新倉 博文 LRQA ジャパン

テクニカルオペレーションマネジャー

新倉 博文

VALUE EYES VOL.13でご好評いただきました特集「ISOもドラッカーも、企業経営と一体化させることで、大きな成果が生まれる。」。これに続き、今回は「企業経営とマネジメントシステム」として、ISO 9001におけるリスク管理や具体的な経営課題の解決方法について、LRQA ジャパン 新倉博文 審査員にインタビューしました。

リスク管理の仕組みが導入される ISO 9001

グローバル市場の激変やエネルギー問題など、先行きが不透明な時代が続く中、企業経営には、いかにリスクを排除して事業目標を達成していくかが求められています。こうした中で、2015年頃に予定されているISO 9001の改定では、リスクマネジメントの考え方が取り入れられることになりました。ISO 14001やOHSAS 18001は元々リスクベースのマネジメントシステムでしたが、ISO 9001も同じようにリスクへの対応が求められる仕組みとなったのです。

現在、ISO 9001の改定の基盤となる原案 ISO Guide 83が発行されていますが、これには、ISO 9001やISO 14001などのISOマネジメントシステム規格の上位構造の共通テキスト・用語・定義が記されています。その中で、ISO 31000(リスクマネジメントの国際規格)の考え方が取り入れられており、「6.1リスク及び機会に対応するための行動」は、組織の目標達成を阻害するリスクの特定から分析、評価、対応に至るまでの、リスクマネジメントの重要な要素となっています。これは、従来より取り上げられてきた予防処置を、リスクマネジメントとして、より焦点を当てたものとなります。

これまでLRQA ジャパンでは、「リスクに基づくアプローチ審査」をご提供していました。今回のISO 9001の改定を先取りしたものといえます。この「リスクに基づくアプローチ審査」は、規格とかけ離れたものではなく、規格に沿いながら、ビジネスに役立つ先進的な審査と言えます。

ビジネスのプロセスを見える化して、変化に対応できる仕組みに

これまでも企業経営の中で、“常にリスクを考えているし、リスク管理は行ってきた”という方も多いかもしれません。しかし、成果を上げるために重要なのは、事業戦略計画の中に組み込み、継続的にPDCAを回し、体系的にリスクをマネジメントできるか。そのためにも、上位レベルである企業経営の仕組み“ビジネスマネジメントシステム”のプロセスを見える化しておくことが大切です。 ISO 9001:2008の「4.1一般要求事項」におけるマネジメントシステムのプロセスの見える化で、上位レベルのビジネスマネジメントシステム自体も見える化することができます。

ISO 9001は目標達成のためのシステムですから、必ず品質目標・計画が設定されることになりますが、これに事業戦略計画を反映することにより、ISO 9001がビジネスと関連づけられます。ISO 9001では、事業戦略計画を策定するために、今回ISO Guide 83で追加された「4.1組織及びその状況の理解」で、金融マーケットや市場動向、法令・規則などの状況の把握が求められています。これにより、社会情勢の変化にも対応しやすい組織をつくっていくことができます。

さらに、ビジネスマネジメントシステムのプロセスの見える化で、ISO 9001改定によるISO 31000の仕組みもうまく取り入れられるようになるでしょう。

Guide 83の構成と上位レベルのビジネスマネジメントシステムの見える化



ISOを活用した経営課題解決のヒント

ISO 9001の改定は、貴社の事業目的達成へ向けて、より経営に役立つ、成果を上げやすい仕組みとなったといえます。ここで、具体的に企業が抱えがちな経営課題を、ISOを活用して解決するためのヒントをご紹介していきましょう。

【経営課題例1】製品不良・不具合を削減したい。

これは審査をしている中で、よくある課題です。ISO 9001を運用している企業では、製品不良が起こると、原因究明と再発防止策に取り組む是正処置を行うでしょう。しかし、原因究明をしても、真の原因まで辿り着かないケースが多いようです。“ISOで是正処置をやらされている”という意識ではなく、“ビジネスのためムダなコストを削減する”という意識で取り組めば、ISOをビジネスと結びつけることができ、そのように考えれば、真の原因を突き止めやすいのではないでしょうか。

また、是正処置である程度不良を削減していて、これ以上の削減は難しいと頭打ちになっているケースでは、是正処置ではなく予防処置に焦点を当てることをお勧めします。予め想定されるリスクを表面化させて、未然に不良を防いでいく。リスクマネジメントを行うことで不良をさらに削減したという事例も、数多く見受けられます。

【経営課題例2】人材教育をもっと強化したい。

スキルのある人材が定年を迎えたが、技術伝承ができておらずお悩みという企業も多いでしょう。こうしたケースでは、人材教育を長期スパンで計画立案しておくことが大切です。5年後に責任者がいなくなったときに誰を責任者にしておくか、必要なスキルはどんなレベルか、どうトレーニングしていくか。これを「6.2.2力量、教育、訓練及び認識」で明確にしていけばよいでしょう。目先のこと、自部門のことだけを考えるのではなく、経営層が関与して5年、10年の長期スパンで、人材計画やカリキュラムを策定しておくことが大切です。

【経営課題例3】営業力を強化したい。

営業スタッフは属人的なスキルに頼りがちでマネジメントシステムとして管理するのが難しい、あるいは、ISO 9001では、営業関連のプロセスは、顧客の要求事項の確認しか入っていないとお考えではないでしょうか。しかし、ISOのプロセス管理の考え方を活用して、ターゲット選定、アプローチ、親派づくり、契約など、営業トップが成功するプロセスを構築、見える化すればよいでしょう。営業スタッフもプロセスや判断基準が明確になれば、動きやすく成果を上げやすくなります。また、ロールプレイなどで訓練するのも効果的です。このように、営業部門においてもISOの考え方を導入していくことが、営業力強化につながるのではないでしょうか。

ISOを企業経営に活かして、リスクを管理したり、製品不良を削減したり、人材育成に活かしたり、営業力を強化したり・・・。今後も、ISOを活用した貴社の経営力強化へ向けて、LRQAジャパンが徹底サポートいたします。

(掲載日:2012年6月29日)