【鉄道】鉄道産業のセクター規格で、海外の成長市場へビジネス拡大を。IRIS(国際鉄道産業標準)

LRQA ジャパン IRIS審査員 大饗 達也

鉄道部品メーカーの設計開発部門にて20年、自動ドアセンサー開発、光電センサー開発、自動ドアコントローラ開発、次世代通勤電車昇降ドアシステム開発に従事してきた(電子制御部設計開発担当)。後に品質保証室にて5年、ISO 9001管理責任者、品質責任者を担当。退職後、LRQA ジャパン品質審査員となる。 

鉄道欧米や新興国で高速鉄道が続々と整備されるなど世界の鉄道産業が活気に満ちあふれる中、日本企業の海外進出がニュースなどで数多く取り上げられています。

こうした中で、鉄道部品メーカーが世界へビジネスを拡大していくために必要不可欠となっているのが、鉄道産業のセクター規格“IRIS”への取り組みです。 
 
 

海外へ積極的に進出している鉄道産業

鉄道産業は少子高齢化の影響で国内需要が横ばい傾向で推移しています。一方、欧米や新興国などで高速鉄道プロジェクトが続々と立ち上がっており、世界市場は今後数年間で2~2.5%のペース※で成長していくことが見込まれています。こうした状況の中で、新幹線に象徴される日本の高度な技術力を活かすべく、日本の鉄道車両メーカー、鉄道部品メーカーともに、さらなる成長を求めて、積極的に海外へと進出しようとしています。

そこで、鉄道部品メーカーが海外で新たに鉄道プロジェクトに参画する場合、発注者サイドの鉄道コンサルタントが作成する入札仕様書に基づいた、製品・サービスの提供が求められます。欧州のコンサルタントが作成する仕様書では、製品規格としてIEC規格、品質システム規格としてIRISが求められるケースが多いようです。

IRISは世界市場で、約4割という大きなシェアを占めるビッグ3と呼ばれる車両メーカー(ボンバルディア、アルストム、シーメンス)が中心となり、サプライヤー向けに策定した規格です。そのため、世界の鉄道プロジェクトに、空調・ベアリング・パンタグラフ・半導体・ブレーキ装置といった鉄道部品メーカーが参入する際、IRISの認証取得が入札結果に大きな影響を与えるケースが増えています。

※UNIFE(欧州鉄道産業連合)の推計より。

技術力が高い日本企業、世界進出の壁となるIRIS対応

IRISは2006年に規格制定されて以来、ドイツ、中国、フランスなどの鉄道部品メーカーを中心に認証取得が進み、現在、600以上の企業で認証取得されています。海外ではシステム規格の考え方をベースにモノづくりが進められるのに対して、システム規格よりも製品規格を重視してきた日本企業の認証取得数は、わずか9社というのが現状です。

技術力を高く評価されていても、IRISの認証を取得していないことを理由に、日本企業が入札に敗れるということも少なからず発生しているという声も耳にします。一方で、中国などの認証取得企業が海外進出を成功させている例は多いようです。もはや、日本の鉄道部品メーカーが世界進出していく上で、IRISを取得することは必須条件となっているのではないでしょうか。

鉄道産業独自の要求が盛り込まれたセクター規格“IRIS”

IRISはISO 9001をベースにしており、自動車産業向けTS 16949、航空宇宙産業向け JIS Q 9100と同じように鉄道産業に特化した国際的なセクター規格です。受注産業であり、30年以上の耐用年数を考慮した鉄道産業ならではの要求事項が盛り込まれています。

IRISの大きな特長のひとつがRAMSです。これは、Reliability(信頼性)、Availability(アベイラビリティ)、Maintainability(保全性)、Safety(安全性)の頭文字を組み合わせたもの。鉄道車両の設計段階から耐用年数を終えて処分するまでのライフサイクルすべてにおける信頼性、アベイラビリティ、保全性、安全性について、コストまで含めてどう管理していくかを定めています。鉄道システムに対して起こりうるハザードを分析しながら、それに起因する事故経過を解析してリスクを数値化。そのシステムが製品のライフサイクルを通して、リスクを担保しつつ適切な品質・コストを確保していくことを要求しています。

日本企業はこれまで故障ゼロを追求し、保証期間を過ぎて何らかのトラブルが起きた場合にはコスト度外視で対応する傾向がありました。しかし、IRISでは故障後の復旧対応のスピードが重要視されるとともにコストという視点も加わっており、鉄道車両メーカーの仕様で定められた故障率・保証期間に応じて適切なコストで復旧させる体制を構築することが求められます。また、耐用年数が長いと部品が旧式化しますが、預託部品の確保や代替部品などを含めて長期スパンで管理できる仕組みづくりも要求されます。

IRIS取得で海外展開が有利になる鉄道部品/鉄道産業ならではの要求事項が網羅されているIRIS

鉄道産業のビジネス全体をあるべき姿へ

これ以外にも、サプライチェーンマネジメントとして、サプライヤーに対して数年後の受注予測までを含めて生産情報にアクセスできる仕組みの構築や、サプライヤーとの取引停止の権限までを含めて踏み込んで規定されています。また、技術ノウハウの共有化の仕組みを規定したナレッジマネジメント、複数拠点を有する企業で部門を横断して効率的にマネジメントすることを規定したインテグレーションマネジメントなどがあります。

鉄道部品メーカーではIRISに取り組むことで、長期スパンでコストを意識しつつ計画的かつ厳格な品質管理が行えるとともに、鉄道産業のプロジェクト全体を組織として効率的にマネジメントできる仕組みづくりが行えるでしょう。IRISはリスクベースのマネジメントシステム規格であり、2015年にリスクベースの規格への改定が予定されるISO 9001を先取りしたものともいえます。

さらに、開発・製造部門だけではなく、経営者サイドへの要求事項として、ビジネスプランの策定や、リスク軽減、マーケット戦略、事業目標も求められています。ですから、IRISに取り組むことで、貴社の鉄道ビジネス全体をあるべき姿へと導いていくことができるのです。

改善に結びつきやすいIRIS独自の審査方式

IRISの審査方式は独特で、あらかじめ200以上の質問が用意されており、点数評価される審査となっています。ひとつの質問に対して0~2点は適合性、3~4点は有効性の領域となっており、2点を取れば適合となり、次の審査では3~4点の有効性が審査されるため、よりレベルアップが図りやすい審査となっています。

また、ISO 9001の認証取得企業がIRISを取得する場合には審査工数が20%削減、ISO 9001+TS 16949もしくはJIS Q  9100の認証取得企業の場合には、審査工数が30%削減されます。IRISはレベルが高く導入の敷居が高いと感じられる方もいらっしゃると思いますが、自動車産業などでTS 16949の認証を取得されている企業では、同等のレベルですから、それほど敷居が高いものではありません。

さらに、IRISの認証を取得するとUNIFE(欧州鉄道産業連合)のデータベースに登録されますから、自動車部品メーカーでもIRISの認証取得で鉄道産業への進出、そして海外進出の可能性が切り拓けます。鉄道は自動車に比べて市場規模が1/10程度といわれていますが、一度受注すれば30年以上の継続受注が見込める産業ですから、ぜひチャレンジしていただきたい規格です。

国内認証取得企業の大半を審査してきたLRQA ジャパン

現在、IRISの日本国内認証取得数は9社ですが、そのうち8社をLRQAジャパンが審査しています。これは、規格制定当初から積極的に教育研修を開催し、お客様とともにIRISの理解・普及・促進に取り組んできたことによります。IRISは英語の規格ではありますが、LRQA ジャパンではセミナーなどで分かりやすい解説を行っていますので、導入をお考えの企業はぜひ、研修受講をオススメいたします。

また、ロイドレジスターグル―プのひとつに、鉄道システムに特化したサービスを世界で展開しているLloyd's Register Railがあり、世界のビッグ3の動きを熟知しています。一方、LRQAジャパンの審査員は国内の鉄道車両・部品メーカーでの実務経験を持つ審査員が揃っています。車両メーカー、部品メーカーの両サイドの実情を把握しているため、よりキメ細やかな、かつ有意義なサポートを行うことができるのです。

鉄道部品メーカーの海外進出のパスポートとなるIRIS。世界のビッグ3はもちろん、国内鉄道車両メーカーからの信頼獲得にもつながる規格です。ぜひ、成長を続ける世界の鉄道ビジネスで成功していくために、IRISの認証取得に取り組まれてはいかがでしょうか。

ライフサイクルを通してリスクを管理/スコアリングシステムによる審査方法/既存規格の認証取得企業の工数削減



(掲載日:2013年7月4日)

関連コラム一覧 <開く>

コラム

全てのコラムを表示

【自動車機能安全】ISO 26262寄稿シリーズ(5): ISO 26262の欧州の現状

先日、LRQAの横浜オフィスにLRQAのサポートを受けアジアでのサービスを展開しているMIRA社のデイビッド氏(写真左)と、組込みソフトウェア開発や機能安全規格教育研修の共同開発や実施にご協力頂いている株式会社東陽テクニカの二上氏(写真右)にお越し頂き、ISO 26262関連及びMISRA(Motor Industry Software Reliability Association)に関するミーティングを実施しました。

【鉄道】鉄道産業の現状と国際標準(2):IRIS規格、要求事項の概要

IRIS規格は認証のプロセスと審査方法に特徴があるため、これらの内容を各々第1章及び第2章で説明し、最後の第3章でシステム要求事項(0項~8項)を述べています。さらに、鉄道製品分類を示した『IRIS適用範囲』や、『IRIS審査工数』など、7件の附属書を加えて規格は構成されています。

【自動車】QMSファミリー セクター規格(1): ISO/TS 16949解説

自動車産業では、製品が安全と直結していることから、不良品ゼロが至上命題となっています。ISO 9001に比べ、より高度かつ多角的な品質管理が行える、自動車産業セクター規格ISO/TS 16949の認証取得が求められるようになっているのです。


お問合せ

ロイド レジスター  Lloyd's Register
マネジメントシステム
ジャパン マーケティング チーム  
Tel: 045-670-7447 Fax: 045-682-5289 
E-mail:   LRQA-Japan-Marketing@lrqa.com