【品質】二者監査の実践テクニック(1):今、なぜ二者監査なのか?

奥村朋子 LRQA主任審査員
奥村朋子
LRQA 主任審査員

2011年7月1日、月刊アイソス主催で二者監査セミナーが産声上げてから、2年が経ちました。その後、IPC(日本科学技術連盟が幹事組織を務めるISO推進者会議)セミナー、IRCAワークショップ開催を経て、LRQA公開セミナーとして2013年4月から2日間コースが新たなスタートを切りました。LRQA公開セミナーでは、リスクを確認し、問題発生の可能性を未然に防止し、買い手と売り手の双方に効果的な二者監査を提唱していますが、二者監査は買い手が「買う物」について、売り手のマネジメントシステムにもとづき、工程管理、設計管理、生産管理、財務管理などの管理技術の面から太鼓判を押せる状態かどうかを監査という手法を使い、自組織の目となり確認していること、それは訪問する前の準備段階から始まっていることは、意外と理解されていない現実を痛感し、本稿の執筆に至りました。

本稿では、「なぜ?」「何のために」といった、活動の目的や期待する成果について、常に意識していただくための言葉が繰り返し出てきます。これは、それにより、実務的な二者監査について、より深くご理解いただくことが狙いです。また、本稿の中で設計管理や工程管理をどのように行うのかを決定したコントロールのための文書の「違い」に着目した監査の準備や監査時のインタビューは、二者監査にとどまらず、複数の拠点を持つ、あるいは類似製品の新規立ち上げがあった際の内部監査にも使えるテクニックになります。

サプライチェーン全体のWin-Winのために

そもそも、ISO 9001の規格開発自体が、当初は二者間契約のための標準で、その後、あるいは同時進行的に、各組織が個別に実施していた二者監査を第三者認証制度を活用し、監査に関する負担を軽減することが目的だったことは、ご存知の読者も多いことと思います。それなのに、なぜ、今、二者監査を提唱するのでしょうか。  

ISO 9001の7.4.1項を振り返ってみましょう。「組織は、規定された購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にしなければならない。供給者及び購買した製品に対する管理の方式及び程度は、購買製品が、その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響に応じて定めなければならない」「組織は、供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として、供給者を評価し、選定しなければならない」とあります。  

読者の組織では、購買要求事項に、購買製品が適合することを確実にするために具体的には、どんなことをしていますか?  購買製品が、その後の製品実現のプロセス又は最終製品に及ぼす影響をどのような方法で評価・測定していますか?  供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力をどのような方法で評価・測定、あるいは監視していますか?  

今、読者の組織でこれらについて、どのように定められているのか、もう一度確認してみてください。  
かつて、日本は優秀な売り手を買い手が育てたり、優秀な売り手であると評価されるために売り手自らが努力したりと、黙っていても、納品される「買い物」は良品が入ってくるのが当たり前であり、欲しい時に、欲しい数が納品されるのが常識の文化を長い歴史の中で培ってきました。また、買い手が圧倒的な優位性を持っているという構図もでき上がりました。「互恵関係」の誕生です。そして、それが常識となっていく中、日本は経済大国の一つとして数えられるほどに成長していきました。この「常識」が、日本国内独特のものであることに気がつかないほどの長い長い時間が過ぎた頃、日本国内以外には通用しない「常識」だと痛感させられる時がやってきました。  

新興国の台頭と、それに伴う日本企業のグローバル展開、あるいはグローバル調達です。契約上は、良品納入を前提とした初物承認で納入される商習慣は、生産現場に投入されて初めて不良品が納入されたことが分かるという、Cost of Poor Qualityの元凶となっていきました。また、後の項で述べる、供給者に起因する多方面の問題も浮上してきました。  

サプライチェーンが複雑化していく中、提出された書類を鵜呑みにした机上の確認ではなく、今、供給元で何が起きているのか? 何ができて、何ができなくなっているのか、を確実な方法で確認し、サプライチェーン全体でWin-Winになるために、それぞれがそれぞれの役割を理解し、果たす努力を怠らないことが急務となっています。

供給者に起因する問題の事例

多くの組織で自社内の品質や生産の問題について是正処置や改善が進み、不良の発生や供給問題に関連するような要因が解決されてきました。一方、近年は、組織を支えてくれていた供給者に起因する問題が重要度を増してきているといえます。以下は、筆者の実体験を含めた供給者起因の問題の事例です。 

【現象】供給者が供給しなくなる、又はできなくなる。ある日、供給者から、主要な原材料の供給を一定期間後に停止する旨、通告を受ける。
事例1:貴社に供給していても利益が出ないため、自主的な経営判断により事業をより収益性の高い分野にシフトすることが行われる。
事例2:M&A等により、経営の主体が変わる(例えば投資ファンド)結果、上記と同様、収益性が低い分野は切り捨てられる。 

【現象】天災、事故、政治的な背景により供給が止まる。
事例1:地震等の被災地域に供給者の主力工場がある。洪水の被災地域に供給者の主力工場がある。
事例2:業界そのものの供給能力が需要に追いつかない。
事例3:レアアースの供給が停止する。   

【現象】集約による特定の供給者への依存度が高くなり、「逃げ場」がない。
事例1:継続的なコストダウン圧力への対応として、供給者を絞り込んだ結果、上記の事態が発生した場合に、他への振り替えがきかない。 

【現象】取引のグローバル化によるコントロールの複雑化、問題点が見えない。
事例1:供給者が、主要な材料やアウトソーシング先を特に通知もなく変更した結果、製品の品質問題が発生する。
事例2:供給者の供給者が事例1と同様に変更を行い、その結果品質問題が発生する。 

【現象】コストダウン圧力により、供給者が必要な活動や投資を削減せざるを得ない結果、供給や品質問題が発生する。
事例1:設備、施設管理間隔の長期化や老朽化設備の使用。
事例2:非正規社員の比率増加。熟練従業員の減少。
事例3:教育訓練経費(又は投資)の削減。 

【現象】「買い手」の油断。
事例1:これまでの供給者と同様の対応をしてくれるものと思い込み供給者を変更したが、期待に応えてくれない。 

いかがでしょうか。数え上げればきりがないほど、供給者にまつわるリスクがたくさんあることが分かります。これらのリスクは、そのまま裏返せば、二者監査における確認のポイント(チェックポイント)になるということです。

掲載日:2013年11月 (アイソス No.192 2013年 11号)

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