【品質】二者監査の実践テクニック(2):二者監査の技術的基盤

奥村朋子 LRQA主任審査員
奥村朋子
LRQA 主任審査員

筆者が、監査テクニックや品質保証の考え方の多くを学んだ組織は、監査という手法を様々な場面(年に数回のQMS監査は、その中の一つでしかありませんでした)で活用し、組織をコントロールすることを得意としていたアメリカに本社を置く企業の日本法人でした。ISO 9001による第三者認証がまだ一般的ではなかった頃、この企業の二者監査に合格することは、業界では一種のステータスとなるほど、独自の監査基準に基づく厳しい監査を実施することでも知られていましたし、日本の品質管理からヒントを得て、シックスシグマという手法を作り上げた組織でもあります。この組織も、かつて、日本企業から「買い物」をする際には、二者監査を実施し、その能力を確認していました。その中で、日本の品質管理に感服し、アメリカ人に適したやり方に形を変えたものがシックスシグマでした。では、この組織が実施していた監査の一例をご紹介しましょう。

Global Manufacturing Audit

Global Manufacturing Audit では、世界中に点在する生産拠点を、世界中から集めた監査のエキスパートで、生産拠点の役割に特化した監査を行います。1,000人規模の工場に5人もの要員を5日間(25人日の監査です。厳しいと言われているTS 16949の初回審査工数をはるかに超えています)派遣してきました。彼らは、例えば、検査はどうしてそのサンプリング数で良いのか? なぜ、その箇所からサンプリングするのか? のような、そのプロセスをどのように管理していくのかを決めたPlan段階の確認、決められたことは決められたとおり実施されているか? のような、プロセスの適合性の確認、それらは期待された成果に結びついたか?  のような、プロセスの有効性の確認を各プロセスに対して行い、Good Pointを含む200件を超える監査所見を発行しました。まとめの時間に1日を要しましたが、単純に計算しても一人平均1日に10件の所見を出していることになります。

Supplier Quality Audit

Supplier Quality Audit は、いわゆる二者監査ですが、監査チェックリストは2種類を準備します。一つは、いわゆる「システムチェックリスト」(図表1)で、ISO 9001やTS 16949の要求事項を参照したようなものです。例えば、工程管理のためのコントロールプランは策定され文書化されているか、コントロールプランのとおりに実施されているか、規定された記録が行われ、検索、提示することができるか、といったタイプで、項目ごとに「重み」がつけられ、最終的には100点満点で得点が計算されます。この得点は取引開始時の合格基準や、取引継続の意思決定の基準として使用されます。読者で二者監査を行っている方々には、同様なチェックリストを使用されているケースは多いものと思います。 

下記の拡大図表PDFをご参照ください

もう一つは、設計や製造工程を中心に、対象となる供給者組織が所属する業界のベストプラクティスになるような管理項目が詳細に網羅された「Process Risk Assessmentチェックリスト」(図表2)です。このチェックリストの作り方や実際の適用の仕方は後ほど述べます。  

Global Manufacturing Auditのメンバーには、Supplier Quality Auditの監査員を担当する要員も含まれていました。監査のエキスパート(いわゆるInternal Lead Auditorと呼ばれている人たちです)は、欧米系の組織ではそう多くはないのが普通です。監査ができる要員は、いくつもの仕事を持っていました。日本のビジネス界でもよく言われているように、「仕事はできる人に集まる」ということでしょう。こうした監査員がメールや電話会議を通じて情報や意見を交換し作り上げていったのがProcess Risk Assessmentチェックリストとなるわけです。  

これだけの監査を実施し、所見もしっかり出すわけですから、監査チームリーダーの是正処置のフォロー工数と労力は大変なものになりますが、この組織では、ITシステムによる是正処置の進捗・記録管理・データ分析のための支援システムが完備され、監査チームリーダーの是正処置フォローやその進捗状況を報告するためのデータ分析を支援していました。  

かつて、フォードの二者監査員が日本のサプライヤーを訪問し、内部監査員が20人を超えると聞き、「日本の組織には優秀な要員が多いんだ」と驚いたという逸話があります。日本と欧米では、監査員に求める力量要件が違っているようですが、その監査で何をしようとしているのか、その目的や期待する成果の違いかもしれません。

下記の拡大図表PDFをご参照ください

沈黙の監査

二者監査ではありませんが、仕事の手順を変化させた時も、そのとおりに実施されていることを即座に監査(定期監査ではなく、そのためだけの臨時監査です)で確認しました。筆者は「沈黙の監査」と呼んでいますが、手順が羅列されたチェックリストを持ち、一切のインタビューもなく、ただただ活動を観察し、チェックリストを埋める監査です(図表3)。 

下記の拡大図表PDFをご参照ください


具体的な事例でお伝えしましょう。発生原因は様々でしたが、地道な活動を続けている中で、ようやく得られた成果が一瞬で吹き飛ぶような「カタストロフィック」と呼ばれる規模の不良が、世界中の工場で突然発生するため、それを最小限の損失に食い止め、最終的には未然防止につなげるために効果的だと考えられる活動手法が、ある一つの工場で成果を出したことから、全世界の工場で同じ手法を取り入れることになりました。これまでやってきた各生産拠点独自の方法を捨て、新たな方法で一斉に取り組むことを決めた本社の品質保証役員は、各工場の品質保証責任者に、この方法が確実に実施されていることを監査せよという指示を出しました。筆者は、ある日は会議室の最後部席の端っこで、また別の日は工程の片隅で、ただじっと、彼らの活動を見るという日を一週間程度繰り返し、その結果を数ページの監査報告書にまとめ、「活動は始まったばかりで、新たな手順に適合した活動は行われていたが、成果はまだ確認できる時期ではない」との結論を提出しました。適合なので是正処置はありません。品質保証役員からは、新たな手順が徹底していることが把握できたことへの謝辞と、継続的に成果の確認を組み合わせた監査の指示が追加されました。  

新たに設定した手順の徹底や浸透を目的とした監査は、これまでもあまり見かけたことはありませんし、筆者には、監査という手法の活用の一事例として印象深い経験でした。  

この監査手法を二者監査の中で使う際には、相手方に与える威圧感に考慮する必要はありますが、品質問題発生時に是正処置が提出された内容どおりに実行されていることを確認する手法としては効果的でしょう。あるいは、筆者が本社からの指示で実施したように、この監査手法で供給者自身が確認した結果を是正処置の効果確認資料として提出してもらうのも一案でしょう。

掲載日:2013年11月 (アイソス No.192 2013年 11号)

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