【CSR】CDPとCSRの新しい潮流(2):CSRの新しい潮流

第二部:CSRの新しい潮流

CSR経営を支えるISO 26000情報開示のガイドラインも充実

企業価値として社会的責任性を追求するCSRに関しては、現在、重要な経営課題として取り組まれている企業も多いものと思われます。2010年にはISO 26000が発行され、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」という7つの原則と「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画・発展」「組織統治」という7つの中核主題がガイドラインとして示されており、CSRへの取り組みの指標として活用されている企業も増えています。

また、CSRの情報開示に関しても、CSRレポートやサスティナビリティレポートのガイドラインが充実してきています。「GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)」からは2013年5月にレポーティング・ガイドラインの第4版となるG4が発行され、同年12月には統合報告のフレームワーク「IIRC」も発行されるなど、様々な動きを見せています。

CSRの開示要求に応えたEUの非財務情報義務化決定

このようにCSR情報開示の環境が整う中、欧州連合(EU)では企業の非財務情報開示の義務化が採択され、EUの大手企業に対して、環境問題や人権の尊重、取締役会の多様性に関する企業の方針、リスク、実績などについての情報開示が義務付けられることとなりました。この決定に基づき、今後、EU加盟各国がそれに準拠した法律を作るものと見込まれ、ロンドン市場などに上場する日本企業にも影響は及ぶ可能性もあると考えられます。仮に直接的な開示義務は伴わなくても、CSR情報を全て開示するEU企業に対する市場での競争力を維持・向上していくには、この機会を捉えて財務情報と併せてCSRへの取り組みについてしっかりと情報開示する必要があります。

日本企業も他人事ではない「人権の尊重」への取り組み

ISO 26000において「人権の尊重」が原則とし定義されていますが、2011年に国連で採択された「ビジネスと人権のための指導原則」の中で「企業は人権を尊重する責任がある」と明記して以来、人権の尊重は企業が果たすべき責任として明確に位置づけられています。実際、グローバルなサプライチェーンを構築する企業において児童労働や強制労働などの人権上の重要な問題が多数発生しています。日本企業においても他人事ではなく、問題ある海外企業をサプライチェーン内に組み込んでいる企業は、人権侵害に荷担する企業と受けとめられるようになっています。さらに、日本国内でも、外国人労働者の活用や、いわゆるブラック企業と呼ばれるような過酷な労働環境などで、人権の尊重が厳しく問われるようになっています。サプライチェーン上に存在する人権侵害などのリスクを適正にチェックし、問題があれば是正する努力、すなわち人権デューディリジェンスが求められているのです。

サプライチェーン全般に求められる持続可能な調達の仕組み

従来のCSRの考え方は組織の内部のみにフォーカスされていましたが、グローバルな分業体制で構築される現代のビジネスでは、サプライチェーンを含めて環境や人権を考えていかなければならないという世界的なコンセンサスが生まれています。日本の企業にもサプライチェーンの課題に取り組む意識が高まり、調達基準を作ったり、サプライヤーに質問状を送る、また監査を行う企業も現れ始めています。

ISOでも、持続可能な調達という視点から詳細なガイドラインを示すISO 20400の開発を進めています。既にCD(委員会原案)が2回発行され、2017年にISO(国際規格)としての発行が見込まれています。JISC(日本工業標準調査会)からの指名で、私も日本の代表として委員会に参加しており、人権や環境のリスクを明確に提起する持続可能なサプライチェーンを実現する仕組みづくりに貢献していきたいと考えています。

CSRを取り巻くトレンド

マテリアリティを明確にして社内で共有するCSRの仕組みづくりを

こうしたトレンドを踏まえて企業ではCSRへの取り組みの本格化が進んでいますが、次の2つの視点から対応していくことをお勧めします。

1つは、開示情報の適正化です。CSR情報にはGRIG4やIIRCなどのガイドラインが多数示されていますが、表面的な記載だけに目を奪われ、本質的なことが十分に理解されていないケースが見受けられます。

CSR開示情報は、投資家をはじめとする専門的な知見を持ったステークホルダーが投資判断をするために使う情報なので、適正な情報開示を伴わなければ、時代が求めている方向とは乖離してしまいます。

また、企業にとってのマテリアリティ(重要性)を明確にしていくことが、2つめの重要な視点です。日本の企業は、従来からの取り組みの積み上げの延長線上で考えがちなのですが、本来のCSRは企業のビジネスモデルが社会に与えるインパクトを見極め、そのリスクに積極的に対処していく取り組みが求められています。顧客、株主、サプライヤー、社員、地域住民といったステークホルダーとの対話の中で、企業の優先課題を判断していくことが重要なプロセスとなります。実際にCSRを担当されている方から、なかなか社内が動いてくれないといったお悩みを伺いますが、社員もステークホルダーエンゲージメントの一環ですので、情報を共有していくことによりCSRへの理解も深まりますし、自分たちが取り組むべき活動の優先順位が明確になっていくと思います。企業にとってのマテリアリティは経営の根幹に関わる部分ですので、トップのコミットメントが最重要課題となります。

CSRへの知見と実務経験を活かした実効性のあるサポートを提供

企業にとってのマテリアリティを見極め、重要な課題に適正に対処してCSR価値の向上を図るためには、組織内部で共有可能な仕組みづくりが欠かせません。

LRQA ジャパンでは、CSRの仕組みづくりから情報開示まで幅広くサポートする各種のサービスを提供しています。特にサプライチェーンの仕組みづくりに関しては、国際的な課題とされる「人権の尊重」や環境コンプライアンスなどの健全性を確保するための監査、教育サポート、さらには、調達基準やサプライヤーへの質問状の策定などの指導サービスも総合的に提供しています。

CSRの実務経験豊富な人材による的確なサービスを提供していますから、理論だけではなく実務にお役立ていただけます。実効性あるCSRの仕組みを構築し、ビジネスチャンスへと結びつけるために、CSR分野でのノウハウ・アドバンテージを有するLRQA ジャパンのサポートをぜひ、ご活用ください。

CSRへの取り組みの本格化をサポートするLRQA ジャパン

融合が進むCSRとISOのマネジメントシステム



掲載日:2015年12月9日

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