【CSR】2020年のビジネスチャンスで飛躍するために、今こそ、CSR経営の本格推進を。

LRQA 経営企画・マーケティンググループ 統括部長 冨田 秀実

プロフィール

ソニー株式会社にてCSR部発足当初から統括部長を約10年務める。

ISO26000(社会的責任)に関するワーキンググループでは、コミュニケーションを担当するタスクグループの座長に就任、規格策定後は、ISO 26000 PPO-SAGのメンバーとして活動。GRI本部の技術諮問委員会(TAC)委員、G4マルチステークホルダー委員会委員長に就任。環境省の環境コミュニケーション規格に関する研究会委員。また、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)のアドバイザリーボードのメンバーも歴任してきた。 

CSR経営元年といわれた2003年から10年が経ち、企業のCSR経営への要求が年々強まる中、2020年東京オリンピックのビジネスチャンスを活かすには、CSRの本格的な推進が不可欠といわれています。今回は、ISO 26000(企業の社会的責任のガイドライン)の規格策定にも携わり、日本のCSRをリードしてきた、LRQA経営企画・マーケティンググループ統括部長冨田秀実が、今求められるCSRについて徹底解説いたします。


ISO 26000の登場でCSRへの取り組みがますます進展

現在、CSRへの取り組みは、多くの企業で重要課題として位置付けられており、世界的に見てもトップレベルの取り組みを推進している日本企業も見受けられるようになりました。1990年代に企業経営に環境という視点が生まれ、CSR経営元年といわれる2003年頃から、CSRが重要視されるようになりましたが、当初は“環境”、“コンプライアンス”“社会貢献”への取り組みが中心でした。しかし、CSR報告書を作成していく中で、様々な課題が手つかずになっていると認識されはじめ、2010年にはISO 26000(企業の社会的責任のガイドライン)が規格化。“できるところからやる”という風潮が強かったCSRの取り組みは、何をどうやるべきかが明確になったのです。

ISO 26000は、ISO 9001のような認証規格ではなくCSRに取り組むためのガイダンス。「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」という7つの原則と、「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画・発展」「組織統治」という7つの中核主題から構成されています。

人権課題などは、日本のビジネス環境にいると馴染みのないテーマと思われるかもしれませんが、グローバルなサプライチェーンを構築している企業では、“児童労働の禁止”、“強制労働の禁止”といった日本では当たり前のことが、世界のサプライヤーでは順守できていないこともあります。海外のサプライチェーンの人権の問題で対応を迫られた日本企業の例もありますから、自社だけではなく世界中のサプライヤーも含めると、今までは考えもしなかった課題が多岐に渡っており、CSRリスクは増大しているのです。

重要なリスクを明確化して優先順位をつけることが必要

では、CSRにどのように取り組んでいけばよいのでしょう。まず、7つの中核主題のひとつ「組織統治」でもうたわれているように、仕組みづくりが先決となるでしょう。CSR部門を中心に、製造・人事・環境など様々な部門と協力しながら推進していく体制が必要となります。すでにISO 14001やOHSAS 18001を運用しているのであれば、環境・安全衛生リスクを管理しパフォーマンスを測定するという仕組みがありますから、これに「人権」「公正な事業慣行」などのテーマを付加していけばよいでしょう。そもそもCSRのリスク管理は本来企業がやらなければならないこと。ですからトップが企業経営と一体化したものとして展開していかなければなりません。

また、CSRの中核主題は多岐に渡りますが、これらを網羅的に取り組まなければならないと考える方も多いようです。しかし、ISO 26000では、“重要性”として示されているように、企業やステークホルダーにとって何が重要なリスクかを見極め、取り組まなければならない課題を優先して取り組んでいくことが重要だといえます。取り組むべき課題は自社だけで判断するのではなく、ステークホルダーエンゲージメントとして示されているように、顧客、株主、サプライヤー、社員、地域住民といったステークホルダーとの対話の中で、優先課題を判断していくことが重要なプロセスとなります。

サプライチェーンの管理も、重要なテーマです。世界中に広がるサプライヤーの取り組みに対して、グローバルな監査網を構築している企業もありますが、現実的にそこまでの体制を構築するのは難しいという企業も多いでしょう。そこで、外部の専門組織を活用して二者監査などで管理していくことが、効率的かつリスクを最小化する対策となるでしょう。

CSRとは企業が本来やらなければならない課題への対応

CSRと聞くと“本業とは違う取り組み”“自社には関係がない”とお考えの方も多いかもしれません。しかし、企業を取り巻く様々な課題への対応は企業経営の根幹をなすことです。例えば、食品業界であれば、食品安全リスクに対応することが最大のCSR活動と考えれば、FSSC 22000に取り組むことがCSR経営の第一歩といえるでしょう。また、運送業界であれば、ISO 39001(道路交通安全マネジメントシステム)で安全運行を目指すなど、各企業が本来やるべき課題と結びつけて考えると取り組みやすいでしょう。

ISO 9001の認証取得が取引条件のひとつとなったように、CSRへの取り組みは取引条件のひとつになりつつあります。大手企業がサプライチェーンのCSRリスクを管理するということは、そのサプライヤー企業にも同じ取り組みを求めてくるからです。突然の要求にも対応できるように、いち早く取り組んでいくことが経営リスクの低減にもつながります。

東京オリンピックのビジネスチャンスを活かすにはCSRが必須

CSRはリスク対応という側面だけではなく、最近ではCSR活動をビジネス改善、ビジネスチャンスに結び付ける“CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)”と言われる考え方も生まれています。例えば、“CSR活動によってサプライヤーとの関係を強化して業務効率を向上させる”、“環境への取り組みを強化することでコストダウンを図る”、“ステークホルダーである社員の声を聞き反映させることでモチベーションを高めていく”・・・、といった効果も表れてくるのです。

2020年の開催が決定した東京オリンピックへ向けても、CSRの取り組みは重要な意味を持っています。1990年代からスポーツ用品業界、アパレル業界などではサプライチェーンの動向、製造過程までを含めて欧米のNGO団体の監視が厳しく、現在もオリンピックなどビッグイベント時には厳しい目が向けられています。

ロンドンオリンピックでは、BS 8901(持続可能なイベントマネジメントの英国規格)が導入されました。これはISO 20121となり、東京オリンピックでもこの規格に沿った開催が宣言されています。ですから、スポーツ用品業界はもちろん、イベント業界、建設業界など、オリンピックに関連する企業にとっては、CSRを推進しておくことは必須。またとないビジネスチャンスを活かすために、CSR活動の本格化・質の向上を目指していくことをおすすめします。

CSR 7つの中核主題/CSRに効果的に取り組むための4つのポイント

CSR報告書は第三者意見よりも第三者検証が重要

CSRへの取り組みが進展したら、それを開示して確実にステークホルダーに伝えることが必要です。特に欧米では社会的責任投資などが盛んになっており、証券取引所で開示義務があるなど、CSR報告書はより重要視されるようになっています。CSR報告書の作成について、以前は“書けることを書く”というスタンスが多かったのですが、最近は必要な項目をカバーするとともに冊子だけではなくWEBでも積極的に公開するなど、その質も高まってきています。

とはいえ、グローバルで求められる報告書にしていくにはどうしたらよいかとお悩みの方も多いでしょう。まずはGRI(CSR報告書の国際的ガイドライン)などのガイドラインに沿って作成していけば、必要な項目はカバーできるようになるでしょう。また、GRIで外部保証が推奨されているなど、報告書の信憑性も問題となります。信頼性を確保するために、日本では第三者がCSR報告書を読んだレビュー「第三者意見」を掲載するのが主流です。しかし、グローバルにみると第三者が掲載データの信憑性を保証する「第三者検証」が主流となっており、日本企業の対応が国際的にも指摘されるようになってきています。CO2排出量など重要なデータだけを第三者検証で保証するだけでも、報告書に対する評価は高まります。ぜひ、第三者検証を活用してみてはいかがでしょうか。

LRQAがCSRの実践から報告書までをトータルでサポート

CSRへの取り組みに対して、LRQAでは様々なサポートをご用意しています。

まず、CSRにどう取り組んだらよいか分からない、CSRのあるべき姿を知りたい、という方には教育研修をご用意しています。第一弾として「ステークホルダーエンゲージメント」の教育研修を開催しましたが、今後、様々なテーマで研修をご用意していますので、どうぞご期待ください。また、ISO 26000やGRIのガイドラインに、自社の取り組みがどこまでマッチしているか、客観的に強み弱みを把握していただけるギャップ分析のサービスもご提供しています。

もちろん、CSR報告書のデータ、GHG排出量のデータの信頼性を証明するための検証サービスもご用意しています。単に、データが正しいかを検証するだけではなく、プロセス改善につなげていただける検証を行っています。さらに、ご担当者様の様々な課題、お悩みを解決に導くアドバイザリーサービスも提供するなど、CSRをトータルでサポートいたします。今後の活動の本格化や質を向上させ、ビジネスチャンスに結びつけるためにも、ぜひ、LRQAのサービスをご活用ください。

貴社のCSR推進へ向けて、LRQAがあらゆる角度からサポート


難しい課題が多いCSRの実務を知り尽くした人材によるサービスを提供しています。

CSRは品質管理や労働安全衛生などと違い、歴史が浅くその実務を熟知している人材は限られています。LRQAでは、英国でブリティッシュテレコムをはじめとする企業のCSRの検証を長年に渡り行ってきました。また、ロンドン五輪実行委員会の道路交通整備計画に対してBS 8901(持続可能なイベントマネジメントの英国規格)の認証審査も行いました。

さらに、LRQAにおいても、CSR経営元年から10年の間に企業のCSR部門で活躍してきた人材を擁しており、その経験に基づく、実務に役立つサービスをご提供することができるのです。

CSRの教育研修を続々とスタート

LRQAでは、CSRの各ポイントを理解・実践いただくための教育研修をスタートいたしました。実務経験豊富な講師による研修で、CSRの実践力を身に付けていただけます。(予定も含む)

  • ステークホルダーエンゲージメント
  • ISO 26000 
  • GRIとCSR報告書 
  • CSR基礎講座

詳しくは、LRQA WEBサイト(教育研修サービス)をご確認ください。


(掲載日:2014年1月24日)

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