【CSR】CHANGE SURVIVAL RESPONSIBILITY 変革と、存続と、責任と:誰もがそれぞれの責任を負っている―企業の持続可能性の進化を見つめる

変革・存続・責任

企業の社会的責任は大きく変化し、世間はいま、組織に何が期待できるかをかつてよりずっと理解しています。そして、市場全体が、経済的問題に加えて環境や社会問題への取り組みがもたらすメリットに気付き始めました。長い目で見た事業の実現可能性は、利益だけでは保証できなくなっています。

中核となる戦略とガバナンスプロセスに持続可能性を組み込んでいる組織こそが、最も生き残る可能性が高い組織となっています。  

Madlen King LRQAの気候変動・持続可能性部門の グローバルリーダー
  Madlen King 
  LRQAの気候変動・持続可能性部門の 
  グローバルリーダー  


20世紀、組織が企業評価の構築を望んだ末に、環境報告書が誕生しました。企業が緑化事業実績をアピールするための宣伝活動に励むなか、「環境に優しい」といったフレーズが巷にあふれました。これら初期の環境報告書のほとんどは、年度末には終わるPR機能としての恒例行事であり、大概は、環境関連に限定して、法令順守の義務とその現状、長年温めてきたプロジェクト、慈善寄付に関する詳細をまとめた、いわば後知恵的なものでした。

この時点では、何を報告するかは企業が自由に選べる状況であり、「何を掲載するか」、そして、特に重要となる「何を掲載しないか」については、企業が決めていました。報告書の対象範囲(地理的および機能にもとづく)、適切な評価基準、メッセージの伝達手段に至るまで、企業の決定に任されていたのです。このような「その場しのぎ」のアプローチにより、透明性は失われ、企業を比較する機能も損なわれました。それゆえ、初期の報告書は環境への配慮を装う「グリーンウォッシュ」の道具ではないか、という疑念も持ち上がりました。

説明責任への移行 

ところが、21世紀の幕開けとともに、こうした状況が目に見えて変化し始めました。最初は、様々なステークホルダーのグループが発言力を得て、企業運営のありかたに対する不満を表現することで、変化を促していました。 

そこから現在に目を転じれば、組織はいまや、こうした要望の高まりに応えて、環境、社会、ガバナンス活動に責任を持つとともに、データや情報の整合性と正確さをこれまで以上に保証する必要に迫られています。

最大の牽引役となるのはいまも、消費者と従業員であると考えられています。ただし、要求として最初に形となったのは、政府が規制当局を通じて、あるいは株式市場からの要望を通じて、環境報告書の発行数を増やし、温室効果ガスに関する報告などの新しい領域にもこれを拡げていくよう求めたことでした。

規制当局の次に登場したのが投資家です。CDP(カーボンディスクロージャープロジェクト)などを通じて、87兆米ドルもの資産を保持する投資家たちは、自身のポートフォリオの潜在的リスクであるこれら問題の見きわめと管理のため、環境戦略についての自発的報告と、気候変動や天然資源の使用に関するデータをさらに積極的に提供するよう求めています。

持続可能性の格付け 

ステークホルダーからのこうした要求により、企業を調査し、公的に入手可能な情報を活用して、持続可能性に関連する企業活動について格付けを行う、様々な持続可能性格付け機関が誕生しました。こうした格付け組織には、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI:Dow Jones Sustainability Indices)、FTSE4GOOD、ブルームバーグ(Bloomberg)、EIRIS(Ethical Investment Research Services=倫理投資調査サービス)などがあります。

これら機関は、ひとえに独立性を持つことによって、公に利用可能な企業情報を増やし、一定の正当性の提供に成功してきました。最近の調査では、61%の企業が、持続可能性への取り組みを後押しする要因に、そして消費者からの要求に応えるために、持続可能性格付け機関を必要としていると回答しています1。

企業も、良い格付けを受けることのメリットを心得ています。同じ調査では、企業の97%が、持続可能性に関する格付けが高ければ企業の評判にとってプラスとなると期待しており、競争における重要な差別化要因としてしばしば利用されています。

しかし、これら格付け機関の成功それ自体が問題を生み出しています。ごく一部を挙げれば、一貫性にかけるアプローチ、格付けを行う側と格付けされる側の利害の衝突、企業の「監査疲れ」のほか、企業が望む結果を得るために、格付け結果のうち都合の良い部分だけを利用することも可能になっているのです。

しかし、最大の懸念事項は、事業の重点課題を特定するにあたって、企業が機関に頼っている点にあります。約96%もの企業が、新たな社会・環境問題の特定に、持続可能性評価機関による調査を利用しています。こうした情報源は良い基準ではありますが、一方で、企業責任を果たす利点を十分に活かし切るには、業務において何が重要であるのか、企業責任部門だけでなくCEOによって、戦略的に、かつ、中枢のガバナンスプロセスを通した形で見きわめ、管理していくことが必要になります。

価値を創出する 

しばらくの間は、法規制による要求や業界水準の範囲を超えた持続可能性をめざす活動が、高付加価値の向上や、販売増加、市場シェア拡大、さらには世間からの支持や才能ある人材の引き留めに至るまで、様々な利点をもたらす可能性があるという考えが、広く受け入れられてきました2。

しかし、長期に渡る持続可能性の取り組みが企業戦略の中核に組み込まれたとき、これ以外の様々な形で価値を生み出すことができます。組織の技術革新力が向上すれば、新たな顧客に対して、新たな製品をもって、新たな市場を見出すチャンスを捉えることができ、業務や労働力の効率も高まります。これと並行して、長期的な戦略的視野を得ることで、例えば規制やサプライチェーンのリスク予測力も向上し、課題適応力もつきます。

現在、各分野をリードする組織では、企業戦略と企業統治の中心に持続可能性を据えて、主要な戦略課題に取り組み、業務を強化すると同時に、社会貢献を可能にしています。

継続的発展 

組織の企業責任戦略において報告書は相変わらず重要な要素ではありますが、いまではごく小さな一要素にすぎません。欧州委員会により大企業に対して推奨されているISO 26000やOECD多国籍企業行動指針(OECD Guidelines for Multinational Enterprises)など、国際的に承認された規格には現在、中心となるガバナンスプロセスと経営手法に企業責任を組み込むことを求める記載が盛り込まれています。そして、報告は、この戦略的見地から実行する必要があります。

報告に関するその他の規格もまた、同じスタンスを取っています。グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI:Global Reporting Initiative)が公開した「持続可能性レポートに関するガイドライン(Sustainability Reporting Guidelines)」最新版(G4)では、組織が財務、環境、社会、ガバナンスに関するパフォーマンスについて開示することを認め、持続可能性レポート作成の整備をめざしています。

報告手法により透明性が向上するとともに、持続可能性に対する企業のアプローチも進化を遂げ続けていますが、これは、企業が生き残っていくためにも必要なことです。「持続可能性について報告を行い、持続可能なビジネスと市場の発展に貢献するためにも、適切で信頼でき、透明性が高く容易に手に入る情報を提供する必要がある」と、GRI社長のErnst Ligteringen氏も述べています。

天然資源の枯渇、水不足、食の安全、そして気候変動はいまや、企業の業務目標の中核に影響を及ぼすようになり、ビジネスに対する社会からの期待もそれとともに変化します。ステークホルダーはいま企業に対して、環境への影響を意識し、影響を軽減するために何を実践しているか、効果的に実証することを望んでいます。

ダーウィンの言葉を借りれば、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者」なのです。


  1. The impact of SRI:An empirical analysis of the impact of socially responsible investments on companies. Oekom Research, 2013
    (「SRIの影響:社会的責任ある企業投資による影響に関する実証的分析」、Oekom Research、2013年)
  2. Valuing corporate social responsibility. Mckinsey Global Survey results, mckinseyquarterley.com, 2009
    (「企業の社会的責任の評価」、Mckinsey Global Survey結果、mckinseyquarterley.com、2009年)

掲載日:2014年7月1日



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