【CSR】CDPとCSRの新しい潮流(1):CDPの本格化

大手企業が本腰を入れるCDP、ますます進展するCSRへの取り組み、その対応策に迫る。

世界各国の企業へ環境対応の情報開示を求めるCDP(旧名称:カーボン・ディスクロジャー・プロジェクト)に対する日本企業の関心が高まっています。

また、欧州では非財務報の開示が義務化されるなど、世界的にCSR関連の取り組みが本格化しています。持続可能な調達のガイドライン(ISO 20400)の規格策定委員会のメンバーであるLRQA事業開発部門長冨田秀実が、今企業がCSRにどう対応していくべきかを徹底解説いたします。

LRQA ジャパン 事業開発部門長 冨田 秀実


LRQA事業開発部門長

冨田 秀実

ソニー株式会社にてCSR部発足当初から統括部長を約10年務める。ISO 26000(社会的責任)に関するワーキンググループでは、コミュニケーションを担当するタスクグループの座長に就任。規格策定後は、ISO 26000 PRO-SAGのメンバーとして活動。GRI本部の技術諮問委員会(TAC)委員、G4マルチステークホルダー委員会委員長に就任。環境省の環境コミュニケーション規格に関する研究会委員、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)のアドバイザリーボードのメンバーを歴任し、今回、JISC(日本工業標準調査会)からISO 20400策定委員会の日本代表に指名されている。


第一部:CDPの本格化

企業のCSRの評価基準として注目度を増すCDP

CDP(旧名称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、機関投資家が連携して運営する非営利団体。全世界の主要企業に対して温室効果ガスの排出量についての質問状を送り、情報開示を求めることから始まったプロジェクトです。現在では、非常に数多くの投資家からの支援を受けて、急速に浸透してきました。

この背景として、投資家に財務的な価値だけでなくCSR価値も考慮した投資判断を求める「社会的責任投資」の考え方があります。先進的なヨーロッパではCSRの評価を考慮に入れるとする投資家の割合が50%に達し、関心が低いといわれた日本でも金融庁から「責任ある機関投資家の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」が公表され、投資家に責任ある投資を促す動きが加速しています。当然、投資家は企業にCSRの明確な指標となる情報の開示を求めるところとなり、CDPの注目度が高まっているのです。

大手企業のトップが参画し、開示レベルも年々向上

現在、日本では500社の企業がCDP質問書送付対象企業に指定されています。質問状に回答する法的義務はありませんが、投資家への影響力があることから質問状への回答率は47%にまで達しています。

こうした状況の中で、2014年10月15日に世界同時開催のCDP報告会が開催されました。日本報告会も多くの企業が参加し、中には大手自動車メーカーや大手電機メーカーの社長自らが出席されている企業もあるなど、トップのCSR経営に対する意識は確実に向上しているといえます。

また、質問状に対する開示レベルも年々向上しており、国内でも開示スコアで満点を獲得する企業も出てきているなど、その取り組みは本格化しています。

開示情報の信頼性を裏付ける第三者検証プロセスの重要性

CDPが開示を求める排出量データのカテゴリーとしてスコープ1(直接排出)、スコープ2(間接排出)があり、2011年度からは事業のバリューチェーンで間接的に発生する排出量を問うスコープ3のレベルまで開示範囲が拡がっています。企業側の回答レベルもスコープ3まで掘り下げる企業も増えてきました。

さらに要求された開示情報が満たされるようになると、情報の信頼性向上という次のテーマが求められるようになってきます。従来は定量的な情報の提供だけで良かったものが、現在は、開示された情報の信頼性を裏付ける検証が必要で、さらに今後、スコアアップさせていくには開示情報の70%以上の検証が求められる予定です。これまでは、東京都ETSの検証スキームをそのまま利用することもできましたが、大手企業が70%以上の検証を行うには、全国の各拠点での検証も必要となるでしょう。そのため、グループ連結の排出データの第三者による検証プロセスの重要性がより増してくるものと思います。

CDP(旧名称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは?

CDPの開示スコア向上を多角的にサポートしているLRQA ジャパン

各企業では年々、開示のレベルが向上し、スコアアップさせる企業が増えていますが、その一方で、CDPの質問状は英文構成であり、その趣旨への理解が足りない日本企業も多いようです。排出量削減への取り組みは十分であっても、質問状に対する理解不足により回答が十分でなく、実際よりも低く評価されるケースも見受けられます。CDPは投資家への開示情報であり、取り組んでいる環境リスク対応への適正な評価を得なければ意味がありません。

国内外の各種検証制度における豊富な経験を有するとともに、CDPのベリフィケーションパートナーとして、この分野での豊富なノウハウを有している LRQA ジャパンでは、CDPで開示する情報に信頼性を与えるための検証サービスを提供しています。

さらに、適切な評価をしてもらうための回答・情報開示の方法を支援するサービスも提供しています。実際の回答を指導させていただくことで、30点の開示スコア向上を実現した企業もありますから、自社の取り組みを正しく評価してもらいたいとお考えの企業のお役に立てると思います。

水・森林の取り組みの評価へと適用範囲を拡げるCDP 

現在、CDPは他の幅広いCSR全般に係わる評価との連動が進んでいます。社会的責任投資の指標であるダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)では、温室効果ガスの情報についてCDPで開示していれば、改めて開示する必要がなくなるなど、共通化が進んでいます。

また、CSR報告書のガイドラインとなるGRI G4でもCDPと同じ定義での指標化を図るなど、温室効果ガスに関する情報開示の枠組みは統一されていく方向にあります。

さらに、水、森林資源も深刻な国際的問題となっていることから、これらに関する情報開示を求めるCDP Water、CDP Forestのプロジェクトが進むなど、CDPの取り組みは広がりを見せています。

こうした動きの背景には、気候変動の影響が急速に顕在化している状況があります。

もはや持続可能な社会実現への対応は、全世界共通の緊急課題。これまで後ろ向きといわれていた米国・中国企業でも、今後、積極的に情報開示が進んでいくとみられています。企業側には、決算報告と同じように企業が社会に果たすべき当然の責任の一環として、CDPを位置づけていく必要があるでしょう。

CDPのスコアアップをサポートするLRQA ジャパン


掲載日:2015年12月9日

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