【食品安全】 食の安全、そして、文化を守っていくために… ISO 22000(食品安全マネジメントシステム)

LRQA ジャパン 主任審査員 星 実取材:LRQAジャパン
主任審査員
星 実


2005年9月、遂に規格制定された、食品業界注目の食品安全マネジメントシステムISO 22000。食品の信頼性が問われている今、食品製造・食品安全管理の技術を継承していくために、食品安全マネジメントシステムの導入が求められています。

消費者が食品の安全に目を向けた本当の理由。

スーパーで買い物をする主婦が、産地や賞味期限、ブランドなど安全性を吟味しながら、食品を選ぶようになるなど、消費者の関心が大きく高まってきた食品の安全問題。なぜ、これほどまでに食品安全が注目されるようになったのでしょうか。もちろん、BSE問題や食品表示偽装問題など食の安全神話を揺るがす事件が契機となってはいますが、この問題はもっと根が深い部分、日本人の食生活と物流の変化にあるのではないでしょうか。 

例えば、家庭での食事は、従来家庭で作られてきた料理が食品売り場などに並ぶ惣菜にとって代わったり、外食ですませる人も増えています。また、食材の購入は加工の状態が目に見えないスーパーなどから入手することが、一般的になりました。私たちの子供の頃は、例えば魚でしたら、魚屋の叔父さんが食材を推薦し、見ている前で捌き、焼くか煮るか調理方法まで教えてくれ、消費者と供給者の関係は信頼の上に成り立っていました。日本の食糧自給率は4割程度で、実に6割もの食品を輸入品に依存している点も見逃せません。こうした食を取り巻く環境の変化によって、食品加工のプロセスだけではなく、野菜でしたら種子、栽培土壌、農薬管理から製品の保管・輸送を含めたフードサプライチェーン、肉類でしたら飼料、生産者、加工者を含めた、いわゆる「From Farm to Fork~農場からフォークまで~」全体にわたる品質・安全にこだわる方が多くなっているのです。

日本の伝統食品の製造現場こそ、マネジメントシステムが必要。

消費者の安全への意識が高まる一方で、食品関連の企業、特に日本の伝統的な食品の製造現場では、今、食品安全のノウハウをいかにして次の世代へ確実に継承していくか、という対応を迫られています。 

例えば、製麺屋さんでは、うどんづくりのための小麦粉は、複数の国から輸入したものを使っているケースがありますが、季節・気候などの影響でいつも同じ産地で、同じ質の小麦粉を使うことはできません。そのため、職人さんが色やさわり心地、さらには官能によって、微妙な違いを判断しながら、プロセス設計をし、品質=味わいや安全を確保しています。しかし、感覚による判断ゆえに経験が重要で、すぐには技術の継承ができません。 

日本の伝統食品(寿司、刺身、豆腐など)は職人さんたちが、作業環境を含め一日に何回包丁やまな板を洗えば微生物から安全を守れるか、ということを先代からの厳しい教えや自らの経験で確立し、生ものを扱いながらも高い安全を世界に誇ってきました。しかし、仕事に関する考え方が変化している若い世代に、この貴重な技術の蓄積をどのようにして伝えるかが、課題となっています。 

このような食品製造の現場を支えてきた方々が間もなく第一線を退きます。こうした環境の中で、経営者が危機感を抱きつつも、消費者からの安全への強い要求に応えていくために、各企業では今すぐにでも何らかの手を打たざるを得ない状況となっています。そのため、食品の安全管理・製造のノウハウを手順書としてまとめ、食品安全を仕組みで管理することで、今までの蓄積を確実に継承していくことができる、マネジメントシステムが注目されているのです。

信頼性の高い安全・製造システムが構築できる、食品安全マネジメントシステムISO 22000。

食品安全マネジメントシステムISO 22000これまで食品産業で安全や品質を守るために導入されていたシステムといえば、品質マネジメントシステムのISO 9001、そして、科学で食品の安全を管理するシステムであるHACCP。しかし、食品産業は特殊性の強い産業であるため、このようなシステムの構築が難しく、なかなか導入が進んでいませんでした。 

こうした中、2005年9月、食品の安全管理HACCPにISO 9001のマネジメントシステムの要素を取り入れた、食品安全マネジメントシステムISO 22000が規格制定されました。現在の厳しい時代に勝ち残っていくために、大手企業だけではなく、中堅企業や小規模工場まで、幅広い企業・団体がISO 22000の認証取得へ向けて動きだしています。 

ISO 22000の大きな特長といえば、農産物・原材料の生産から、製造、包装、輸送、販売に至るフードサプライチェーンすべてが対象になっていることです。例えば、牛乳の場合には、どこでどのように製造され、どのように管理されているのか、輸送管理はどう行われているのか、さらには、牧場の牛はどんな牛で、どんな餌を食べているか、その餌の原料は‥‥?というように食品製造のもっとも源流に近い部分までをトータルで管理するため、高い安全性を証明できるシステムとなります。 

また、ISO 22000では管理値の設定に踏み込み、“なぜこの管理基準なのか”という根拠までを求めるようになるなど、食品産業に即した内容となっており、より信頼のおけるシステムの構築が可能となります。

サプライチェーンの理解、トップの意思、そして、コミュニケーションが、成功への3つのカギ。

こうした食品安全マネジメントシステムを効果的に導入・運用していくためのポイントは、まず、フードサプライチェーンのどこに、組織の活動範囲が適用されているかを明確に把握すること。例えば、飼料会社や運送会社、設備メーカーなどもフードサプライチェーンの一部。こうした企業で経営者、担当者に、自分の会社がフードサプライチェーンの一翼を担っていることを理解していただくだけで、認証取得への取り組み姿勢が大きく変わってくるようです。 

また、他のマネジメントシステムと同じように、経営者の意思が大切です。特に、ISO 22000は経営者が自分の会社だけの安全を追求していこうという姿勢では、フードサプライチェーン全体の安全性を確保することが難しくなってしまいます。そこで3つ目のポイントとなるのが、監督官庁を含む関連する企業とのコミュニケーション。製造業の会社が認証を取得したら、原料メーカー、物流、設備、消毒殺菌、といった関連メーカーとの安全管理の協力体制を組まなければ、安全性を高めていくことはできないはず。そのため、関連企業と利益も責任も分かち合っていくという姿勢・体制をつくり、食品安全マネジメントシステムを構築していくことが大切です。

食品の現場を知り尽くした審査員なら、本当に意義のあるシステム構築ができる。

さて、認証取得にあたり、審査登録機関選びにお悩みの方もいらっしゃるでしょう。食品の安全といえば、他の産業に比べて極めてリスクが大きいため、キメ細やかな管理が必要となってきます。そのため、本当に効果的な安全システムを構築していくためには、何よりも食品の現場を知り尽くした審査員による現場の緻密な審査が必要となるでしょう。その点、LRQAの審査員はすべて食品企業での実務経験がある人だけを採用しており、また、食肉、清涼飲料水、加工食品、食品添加物などの得意分野をもつ審査員を多彩に揃え、食品産業全体をカバーできます。そのため、より高品質で、厳密な審査が行えますので、有意義な安全システムを構築することができます。 

また、日本茶やリンゴ、メロンといった果物など、海外への輸出品が増えていますので、審査登録機関の信頼性も大切なポイントです。LRQAは、世界的に知られた審査登録機関。LRQAのマークなら、輸出の際にも貴社の商品の価値をより高めることができるでしょう。さらに、LRQAが完全に独立した審査登録機関であることも、信頼をいただいている要因です。 

消費者から選ばれる企業となるために、そして、難しいといわれる食品製造の技術を継承し、仕組みとして管理していくために、ISO 22000が何よりも必要だと語る星主任審査員。貴社でも、食品業界で熱い視線が注がれている、ISO 22000を身近なものとして捉え、導入へ向けて動き出してみてはいかがでしょうか。

フードサプライチェーンすべてに求められている食品安全マネジメントシステム

安全な食品を届けるために、サプライチェーン全体の協力体制が必要となります。 

サプライチェーン全体の協力体制



一通のメールからのスタート ~ある煎餅屋さんがISOを取得する理由~ 

今年のはじめ頃のこと。私がISO 9001の審査のために訪れたのは、昔ながらの雰囲気を残す煎餅屋さん。審査を始める前、社長さんにISOを取得する理由をお聞きしたのですが、社長さんは一通のメールを出力して“これが本当の動機なんです”と私に差し出したんです。そのメールにはこんなことが書いてありました。 

「私はアメリカ人の主人と結婚してから、ずっとアメリカに住んでいるのですが、先日日本にいる父が○○煎餅を送ってくれました。それを食べると、30年前にいた田舎の味がしたんです。涙が出るほどうれしくて、一日一枚ずつ食べています。」 

そして、社長さんはおっしゃいました。“世の中にこう思ってくれる人がいる限り、この煎餅の味は絶対絶やしたくない。だから、ずっとこの味を残していけるような仕組みができるように審査してください”。この一言に、ISOの本当の意味を教えてもらったような気がしました。 ISOは、食品の安全を守ると同時に、日本の食文化を守っていくもの。私も日本の食文化を担うために、との想いで審査を進めました。


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