【検証】アジアにおける排出量取引制度の普及

アジア各国の政府は、自国の産業が気候変動の要因となる確率を下げることに本腰を入れ、市場主導型二酸化炭素排出量削減メカニズムへの関心を高めています。しかし、排出量取引制度の実施と、ステークホルダーの信頼確立には、まだしばらく時間がかかりそうだとLRQA 気候変動 & CSR アジア地域の代表であるロバート・ハンソーは語っています。

まだ不完全であるとは言え、EU排出量取引制度(EU ETS)の運用が開始されたことにより、アジア各国の政府間に、独自の取引制度を確立する気運が生まれています。そして、気候変動に関する新たな世界的合意がなされる2020年までには、アジアの数多くの企業がそれぞれ国内の排出量取引制度に加わっているでしょう。

国内排出量取引制度は、すでに日本とニュージーランドで実施されています。オーストラリアでは、7月に炭素価格制度が導入され、中国、インド、韓国をはじめとした国々でさらに多くの制度が生まれつつあります。各国政府は国内で独自の法律を設け、法律制定手続きを国内で行うほうが、国際舞台で交渉するより簡単だと判断してきました。

しかしこれらの制度が、本格稼動し始めたEU ETSのような排出量取引プログラムになるのか、またそれが国際的連携をもつようになるのかは、いまだ不明で簡単なことではないでしょう。ホスト国の大半は優先事項が大きく異なるうえ、産業、経済、制度的条件の違いは言うまでもなく、国内の異分野の利害関係者が、各々の市場での法律の制定にあれこれと策を練っています。

たとえば韓国は、2008年に国家的なグリーン成長戦略を発表したが、そのETS提案は国内の激しい反対にあいました。とりあえず暫定措置として温室効果ガスおよびエネルギー目標管理制度を導入し、ようやく今年5月に、数回の延期を経てETS法案を可決しています。



中国における試行プログラム 

中国の7つの地域での試行プログラムのうち、2つの規制草案が発表され、利害関係者は何が始まるのかを初めて把握することとなりました。価格設定方法についてはあまり多くの情報はないものの、2015/16年に想定される全国規模の炭素市場を考えると、このETSは最終的には世界最大のものになる可能性があります。

しかし、多くの評論家はこの制度の将来性に気を取られ、中国はこれまで何度も人目を引くような目標らしきものをかかげてきたにもかかわらず、この国が克服しなければならない巨大な課題を見すごしているように思えます――第一に、わずか数年しか続かないかもしれない地域的な試行スキームのために、企業がよりクリーンな技術とプロセスに投資するかどうか不明です。したがって大量の取引を生むことよりも、試行段階における目標は、中国の国家的ETSを実施するにあたっての条件、基準、インフラに対して関係者が準備を整えることです。これには時間をかけてゆっくり成熟させていく必要があります。

一方、日本では、国民の不安が広く伝えられているにもかかわらず原子力発電所2基が再稼働し、昨年の福島危機以降、この国が直面しているエネルギー問題を浮き彫りにしています。二酸化炭素排出削減目標を達成するためには、国際的なオフセットの利用が、かつてなく増大する可能性があります。日本政府が提唱する二国間オフセット・クレジット制度は、そのオフセット・クレジットの多くを開発途上国から引き出して、目標を達成することが期待されています。国連のクリーン開発メカニズムに似た概念で、よりシンプルなプロセスによって、より多くの投資が行われることを期待するものです。ひとつには輸出の増加も意図されており、この制度は日本の企業に恩恵をもたらす可能性がああります。

また日本は、他国が同様の対策を講じる前に独自のプログラムのもとで大量のオフセットを潜在的目標としており、比較的安価なクレジットの供給を確保しています。初期プロジェクトが確認され、実現可能性調査が完了し、今はキャパシティ・ビルディングプロジェクトが進行中です。ルールが明確化されれば、環境保全と国際炭素市場への影響が、さらによく理解されることになるでしょう。

このようにアジアでは複数の制度が生まれ、排出目標、基準、規格の管理方法もさまざまに異なるなか、地域全体として炭素市場を確立する話し合いも始まっています。しかし共通の基準とルールがない状態では、異なるプログラム間でユニット取引方法を見出だすことは困難です。基準が大きく異なれば、取引は複雑になり、費用もかかます。分裂した自主的炭素市場が合理的だとみなされれば、質の高いクレジットを見極めるのが困難で、価格に大きな開きが出てくるでしょう。



共通の理解が必要 

問題のひとつは、これらのイニシアチブが、経済情勢や制度面での能力においても異なる国々で生まれていることにあります。短期間で共通の基準を決めるのは無理な注文だとしても、将来的には、統合の容易性とクレジットの交換可能性、また測定、報告、検証(MRV)の原則に対する共通理解が求められます。参加者の間で信頼と自信を生み出すシンプルだが順応性のあるMRVの制度は、時間の経過とともに、より強力な仕組みとなるでしょう。

その実現は、各制度の提唱者の意欲によります。環境的有効性が主要目的であれば、2020年のグローバルスキームへのアジアのコミットメントとともに、国家レベルの体制に対する継続的な熱意、そして共通の基準とアプローチを生み出す時間と刺激策が必要になります。

これらの取組みすべてに共通する1つのテーマは、システム設計の初期段階において、民間の参加を促すうえで規制立案者が経たさまざまな経験です。最終的には、アジアの企業が低炭素技術利用への転換を開始するためには――世界中の企業と同様に――長期的な価格指標が必要となります。多くの場合、早期から企業の深い関与を促すことによって、これら新システムの策定者は、その役割を果たしてきました。

新興スキームの短期の目標は、市場の準備を整え、イニシアチブが参加者からの支援を得られるようにすることにあります。MRVに共通の原則を打ち立てることは、ある種の一貫性をもたらすための、利害関係者の自信を育む重要な第一歩になります。これを実現した後の長期的課題は、炭素クレジットの需要を刺激して排出量削減への投資を増やす、積極的な削減目標を設定することです。


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